吉田氏は学生時代、まったく英語ができない状態から思ったことが不自由なく話せるようになるまで、5年間に渡ってさまざまな経験をしたという。
当時を振り返りながら、「少ししゃべれる、まあまあしゃべれる時が一番楽しかった。勉強をせずに、旅行ができるレベルまで使えること。取り出してすぐに使えるシンプルなものがいい。Wi-Fiも必要ない──という3つの特徴があれば(当時の)僕がほしいものになると思った」と説明し、2年間に渡って開発し、ようやく完成させたと語った。
1台のiliを介して双方向でコミュニケーションすることも考えたという。しかし、一人は使い方を知っていても片方は知らない、初めてで戸惑いがある状況になると、コミュニケーションがうまくいかないことがあり、一方向にフォーカスするほうが満足度が高かったことから一方向に限定したと説明した。
翻訳精度については、“この程度”と位置付けることが難しいとし、「旅行向けにフォーカスすることで精度を上げているので、ビジネスの打ち合わせ、医療の現場など向かないところもある」と説明した。
たとえば、「高い」という言葉には、「expensive」と「high」という訳が考えられるが、旅行のシーンではexpensiveを使う率が高い。そのため、旅行というシーンに絞ることで、翻訳の精度を高めているという。
なお、旅行でよく利用する「空港」「交通機関」「ホテル」「食事」「買い物」「観光」「自己紹介」「トラブル」といったシーンを想定している。
吉田氏は、空港に着いてホテルへの移動、現地でのコミュニケーションなどを想定したデモを披露した。iliが得意とするのは、ワンフレーズ、2フレーズ程度の短文だ。「タクシー乗り場はどこにありますか」「ヒルトンホテルまでお願いします」「窓を閉めてください」「朝食は何時からですか?」「この近くにおすすめのレストランはありますか?」「何を飲んでいるのですか?」といった翻訳が見られる。
なお、「えー」「あー」といった言葉が入ったり、方言が入ると精度が落ちるという。また、英語もアメリカ英語を基本とし、イギリス英語やオーストラリア英語は問題ないが、シンガポールやインド英語になるとまだ課題があるという。
iliはこれまで、ハワイや日本国内の一部で実験を行っており、ハワイ州観光局の公認商品として認定されている。
ゲストとして、先駆けてテスト導入したイオンモール、東京地下鉄、4月からiliのレンタルサービスを行うビジョンの3社が登壇した。
イオンモールでは、イオンモール沖縄ライカムにて2回に渡って実証実験をしたという。一方向だった1回目よりもスタッフ、来場者の両者がiliを持っていたほうが「楽しくコミュニケーションできたと思う」(イオンモール 営業統括部 インバウンド推進グループ趙氏)とコメントした。
また東京メトロでは、訪日客がここ数年増えていることから、実証実験に参加した。「案内所では中国語、英語に対応しているほか、一般の駅係員も、英語の研修をして、対応できるようにしているが、これからまだ海外の方が増えて来る。通信が必要なく、場所を問わず使えるということ。スムーズなコミュニケーションに可能性を感じた」(東京地下鉄 営業企画本部 企業価値創造本部の小泉氏)と語った。
ビジョンは訪日客を含む海外渡航者が一層アクティブに過ごせるよう、4月下旬から国内14の空港や宅配でレンタルを開始するという。
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