4K、HDRと最新の映像技術を取り入れて映像配信サービスを実施しているNetflixが、アニメ作品でも最先端の体験を提供する。1月1日にアニメ作品「シドニアの騎士」のHDR配信を開始。1月20日に、東芝の有機ELテレビ「X910」を使って試聴会を実施した。
シドニアの騎士は、ポリゴン・ピクチュアズが制作したアニメ作品。すでにNetflixでSDR版を配信している人気作品で海外ファンも多い。今回のHDR化はSDR版を米国でHDR化したもの。Netflixのエンジニア メディアエンジニアリング&パートーナーシップの宮川遥氏は「劇場作品のアニメはあるが、テレビシリーズのアニメをHDR化するのはおそらくはじめて」とする。
HDR化にあたっては、ポリゴン・ピクチュアズ協力の下、全シリーズを16ビットのTIFF連番ファイルで出力したものを米国に送り、グレーディングしたという。作業は2016年の早い時期に実施しており、国内ではHDR化への制作環境が整わなかったとのこと。監修は米国の人間が担当している。
ポリゴン・ピクチュアズのプロデューサーである石丸健二氏は「光がすごく明るいというのが第一印象。すでに何度も見返しているコンテンツにも関わらず、別コンテンツかと感じるくらい情報量が違った」とHDR版を見たときの印象を話す。
シドニアの騎士で副監督を務めたポリゴン・ピクチュアズの吉平“Tady”直弘氏は「HDRは、高いコントラストを保ったまま、美しい中間階調を描くことができる。作りたかった画に近づいた喜びを感じられる」と、作品の仕上がりについて話した。
上映会では、1月に発表されたばかりの東芝映像ソリューション製の4K有機ELテレビ「REGZA 65X910」を2台使用。SDR版とHDR版を見比べる形で開催した。
東芝映像ソリューション開発センター オーディオ&ビジュアル技術開発部グループ長の山内日美生氏は「REGZAの映像エンジンと画作りはコンテンツの美しさをいかに引き出せるかに注力している。シドニアの騎士では星一つ一つの明るさの違い、トンネル内でのディテールの描かれ方を見てほしい」と視聴ポイントを伝えた。
有機ELテレビで視聴した石丸氏は「率直にいうと、自宅のテレビが一番いい視聴環境になるだろうという印象を持っている。今までいいものは劇場で見るという思いが強かったが、自宅でもここれだけの高画質を見られるのは素晴らしいこと」と評した。
東芝の山内氏は「リッチで情報量の多いコンテンツが供給されることで、今までのテレビで表現できなかった部分も求められ、それが開発の宿題になる。テレビ開発のモチベーションにつながる」と今後について話す。Netflixの宮川氏も「素晴らしい作品を提供し続けていただいて、テレビで良い作品を見ていただくことで、映像配信のサービスはよりよくなる」とした。
Netflixは、全世界に会員数9300万人以上を持つ巨大映像配信サービス。オリジナルコンテンツを最先端の映像技術を使って配信することでも知られ、現在4Kコンテンツにおいては「最大のライブラリを提供できるようになった」とNetflix代表取締役社長のグレッグ・ピーターズ氏は話す。「今注力している映像技術はHDR。すでに実写版のHDR作品をリリースしているが、いよいよアニメでもHDRのシリーズが出てきた。シドニアの騎士は始まりにすぎす、原作者弐瓶勉氏、ポリゴン・ピクチュアズ制作の『BLAME! (ブラム)』も控えている」と今後の展開についても話した。
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