スマートフォンはわれわれの生活に当たり前のように存在するテクノロジになった。iPhone以降の時代について、筆者は「After iPhone」もしくは「Ai」と呼んでいるが、さまざまな変化が起きている。
よく、ケータイが登場して、友達との待ち合わせの時間や場所を正確に決めなくなった、という話を聞く。ドラマで登場人物同士がすれ違ってしまうことに違和感を覚えるほど、人とのコミュニケーションは手軽でリアルタイムになった。
手軽さとリアルタイムさ、そしてインターネットの革命的なアイデアやビジネスモデルを、スマートフォンを持つ地球上の人々全体に広めたことが、After iPhone時代の本質だ。いつでも、どこでも、だれでも、その仕組みに参加する、あるいは参加させられてしまう時代なのだ。
スマートフォンが登場する以前、電子メールはPCで見るもの、と相場が決まっており、「メールはまだ見ていません」といわれると、「なるほどパソコンの前に座る時間が取れていないのか」という理解をする。しかし今では「あえて見ていないのか」という解釈を与えかねなくなえっている。
もっと言えば、最近では、Facebookなどのメッセージではなくメールで送ったことで、「急ぎではない」という印象を与えることもあるかもしれない。
スマートフォンを持つ人が増えたことにより、スマートフォンを持っている人同士の間でも、そうしたマインドセットや解釈の違いを生み出している。それは世代なのか、住んでいる地域なのか、個人の趣向なのか、あるいはそれらすべてが複合的に作用するのかもしれない。
2017年1月にラスベガスで開催された世界最大の家電展示会CES。その主役は控えめに評価しても「Alexa」だった。
Amazon Echoに搭載される人工知能ボイスアシスタントで、1月の段階で、開発者がAlexaに伝授したスキルはすでに7000を数える。スキルは、なんらかの問題を声で解決するシンプルなものから、周辺のデバイスと連携させてなんらかの状況を作り出すこともある。
CESに出展している企業が、Alexaをサポートし、もはや人工知能やスマートホームと行った世界の「共通言語」になっている様子に驚かされる。いわば、IoTの女王に即位したと言ってもいいだろう。
iPhone以後の世界、「Ai」の次は、人工知能という意味で「AI」の時代になる。AppleはiPhoneを、AIの時代にも、iPhoneを中心的な存在として活用して行きたいと考えているだろう。冷静に考えれば、スマートフォンがアシスタントとしてきちんと役割を果たしてくれれば、より現実的でもある。
また、どのように人工知能と対話するのかについても興味深い。Amazon EchoやGoogle Home、AppleのSiri、そしてAdobe Photoshopに至るまで、声での操作に取り組んでいる現状からすれば、確かに声は有望なインターフェースだ。
ただ声でコンピュータを操作することに、われわれはまだ慣れていない。そもそも、どんな言い方をすれば目的が果たせるのか、言葉の選び方や言い方を会得しなければならない。そうした操作をいくつも必要とするなら、画面上をタップする方が覚えることが少ないとも考えられる。
また、スマートフォンはせっかくいつでもどこでも、という時間と場所の自由をコンピューティングやインターネットにもたらしたのに、声のインターフェースは使う場所は限られる。公共空間やオフィス、学校などでは喋って操作することは避けざるを得ない。
ただ、問題があることは良いことだ。それに向けて解決しようとアイデアを出すし、技術的な発展の可能性が存在しているからだ。AppleやGoogleがスマートフォンで直面している問題は、スマートフォンが抱えている問題が、せいぜいバッテリ持続時間とディスプレイのガラスが割れることぐらいに絞られてきた点だ。
スマートフォンは引き続き、われわれの生活の変革を主導するし、そのリーダーとしてiPhoneの存在は小さくならないだろう。iPhoneがわれわれの満足を満たす存在にまで成長してきたことについて祝福しつつ、一方ではさみしく感じている。そんな複雑な心境へと変化したこともまた、認識しておきたい。
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