チャットによる物件探しができる賃貸サービス「ietty(イエッティ)」を運営するiettyは1月16日、チャットを通じて商品を販売する“会話型コマース”の活用を検討している企業向けに、設計から導入、運用までを支援するサービスを開始した。第1号案件として、中古車販売・買取の「ガリバー」を運営するIDOMとの取り組みを開始した。
iettyは、希望条件に合わせてチャットでおすすめの部屋を探して次々と提案してくれるサービス。ユーザーのスマートフォンに希望に沿った物件情報がプッシュ通知で届き、チャット形式で閲覧したり、コメントしたりできる。気になる物件があればそのまま内見の依頼も可能。同社では、接客の大半を人工知能による“チャットボット”で運用しており、必要な時だけオペレーターが手動のチャットで対応している。
2016年にFacebookやLINEなどの大手SNSがチャットボットのAPIを公開したことで、昨今は自社ビジネスにチャットボットを活用しようと考えている企業が増えている。iettyではサービスを開始した2013年6月からチャットボットによる物件提案をしており、現在は月間数百名の顧客が賃貸仲介の物件を成約しているという。創業時から狙っていたわけではないが、結果的にいち早くチャットボット事業に参入することができたと、同社代表取締役社長の小川泰平氏は話す。
「2016年はチャットボット元年と言われたが、導入してもうまくいっていない企業の方が多く、我々も(2012年の創業から)5年かかってようやく何とかなっている。まだチャットボットはそこまで万能ではなく、運用するにも勘所を押さえなければいけない。カスタマーサポートでチャットボットを導入する企業が増えているが、商品紹介からコンバージョンまできっちりできているのは、国内ではほぼiettyだけだと思っている」(小川氏)。
チャットによる会話型コマースで失敗するケースは大きく3つあると、同社取締役COOの内田孝輔氏は指摘する。1つ目が、商品提案や質問への回答をすべて自動化したことで、結果的に「使い勝手の悪い検索サイト」のようになってしまうこと。2つ目が、ユーザー体験を高めようとするあまり、すべてを手動で対応し「コスト効率が悪いカスタマーセンター」になってしまうこと。3つ目が、利用から購買までのユーザー体験を想定してサービスを設計していないことで、継続利用に至らないことだ。
そこでiettyでは新たに、会話型コマースの導入を検討、または導入したものの期待する効果が得られていない企業に対して、同社が培ってきた“自動と手動を融合”したオンライン接客のノウハウやシステムを販売。あわせて、会話型コマースを支えるコンシェルジュ組織も設計・運用する。
具体的には、同社の従業員が約1カ月かけて、依頼主の会話型コマース導入や運用改善にあたっての現状業務・ユーザー体験を調査、分析。その後、集客から購買行動に至るまでの一連のユーザー体験を設計し、会話型コマースの導入や、運用の支援をする。要望があれば、システム自体の構築やチャット業務の受託などもするという。
第一号案件となるIDOMでは、オンラインで中古車を提案するサービス「クルマコネクト」の立ち上げや、LINE公式アカウントの運用など、オンライン接客による自動車販売を推進している。IDOMは会話型コマースのシステムを自社で構築していたため、iettyはコンサルティングという形で2016年12月から支援を開始。すでに大幅にKPIが上がるなど効果が出ていると小川氏は手ごたえを語る。
サービスの価格は、支援する範囲によって異なるが、まずは効果を仮説検証したい企業向けに、小規模にスタートできるパッケージも用意する。費用の目安は1カ月約100万円で、2カ月ほどで本格導入するか判断できるという。同社では、高額かつ抽象度が高い保険や旅行、金融、ブライダルなどの商品を取り扱う企業の利用を想定しており、2017年中に30社への提供を目指す。
また今回のサービス開始にあたり、会話型コマースの導入を検討、または導入しているものの課題がある企業向けに、セミナーと相談会を開催する予定。さらに、会話型コマース導入・運用支援サービスのビジネスパートナーも募集するとしている。
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