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カンボジアの長距離バス予約アプリ「BookMeBus」--社会問題にも取り組むスタートアップ

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 カンボジア国内における地方間の移動は、陸路が圧倒的である。中でも昨今、長距離バスの存在感がぐんぐんと増していて、利用者も運行会社も増え続けている。今回は長距離バスやタクシーの総合チケット販売プラットホーム「BookMeBus」を紹介する。

「BookMeBus」
「BookMeBus」

 まず、なぜ陸路移動が主流なのか、その背景を説明しよう。カンボジアの遠距離交通網は脆弱と言わざるを得ない。まず空路については、現在稼動している国内の空港は、首都プノンペン、アンコールワットのあるシェムリアップ、湾岸都市シハヌークビルの3都市のみ。利用者は一部のビジネスパーソンや旅行客に限られる。

 鉄道は、プノンペンを中心に南北を縦断する線路はある。しかし、内戦で破壊されてから復興が進まず、一部区間では運行しているが貨物中心であり、その速度は牛歩並みである。2016年、プノンペン~シハヌークビル間に14年ぶりに旅客鉄道が再開したが、まだまだ人の足としての機能は果たしていない。

地方間の移動はバスが人気

 そのため、地方間移動の圧倒的シェアは陸路にある。ASEAN統合に向けて幹線道路も舗装され、以前に比べてはるかに快適な陸の旅が可能になった。特に最近ではバスが人気上昇中。以前は乗り合いタクシーを利用する人が多かったようだが、社会が豊かになるにつれ、多少お金を払っても、快適なバスで移動したいという人が増えているようだ。

大型の長距離バス
大型の長距離バス

 たとえば、プノンペン~シェムリアップは、片道約320kmのメイン路線。この路線だけで10社以上のバス会社が運行しており、競争が激化している。運賃は片道7~15ドルと約2倍程の差があるが、価格に比例して機材もサービスも上がっていくというのが相場だ。どの会社も今や無料Wi-Fiサービスは基本ついており、会社によっては軽食がついたり、バスガイドによる簡単な観光案内があったりと、サービスにも個性を打ち出している。

 その他の路線でも、バンコクやホーチミンシティへ乗り換えなしで行けるダイレクトバスも出てきて人気を集めている。会社によっては小さな地方都市まで網羅しているので、小回りがきくのも魅力である。

横のつながりがないバス業界

 そんな、各社しのぎを削る長距離バス業界に登場したのが「BookMeBus」である。設立者で現代表のチア・ランダさんは27歳のカンボジア人。プノンペン出身で日系含むIT企業を経て、2015年にBookMeBusを立ち上げた。設立2年目の現在、社員は13名となり、提携バスオペレーターは30を超す。

 「カンボジアにはこれだけ沢山のバス会社があるのに、横のつながりがなく個々が点在している。客観的な情報をもとに、顧客自身が料金やサービスを比較し、自らに最適な路線を選択して購入できる、総合的なプラットホームを作ろうと考えた」(ランダさん)。

BookMeBusアプリの検索画面 BookMeBusアプリの検索画面
※クリックすると拡大画像が見られます

 BookMeBusの検索方法は非常にシンプル。乗車地と目的地、乗車日を入力して検索ボタンを押すと、適合したすべての便がヒットする。よくある検索サイトではあるが、これが今までカンボジアにはなかったことを考えると画期的である。

 実際これまで、路線、タイムテーブル、運賃などの情報を調べるには、チケットを取り扱う旅行代理店か各バス会社に直接問い合わせる以外に方法がなかった。BookMeBusではそれが一目瞭然であり、サービス内容や車両タイプまで明記されている。さらに、乗車地と降車地の場所が地図つきで掲示されているのも、現地事情に詳しいBookMeBusならではのアイデアだ。

 「プノンペンには中央バスターミナルなるものがなく、各社のオフィスで乗り降りする場合がほとんど。中心地から離れている場合は、移動だけでも時間がかかり大変。BookMeBusではその情報も選択肢の1つとしてユーザーに公開している」(ランダさん)。

街中にあるバス会社のオフィス
街中にあるバス会社のオフィス

オペレーターの意識改革を促す

 カンボジアの長距離バスには不透明な部分も多く、旧態依然の古いシステムがまかり通っている。

 たとえば、運賃は外国人とカンボジア人で異なるが、その額が明記されていなかったり、対応するスタッフによって変動したりすることもある。ある種アナログで閉鎖的な部分を、サイトで情報公開することで透明化して健全な方向に持っていくこと。また、現金決済が9割を占めるところへ、オンライン決済を導入して、カンボジアの経済システムの新陳代謝を促すこと。BookMeBusはこうした社会問題の解決にも取り組んでいる。

 「ユーザーとオペレーターの双方にとって利益のあるシステムを作っていきたい。そして5年後までに長距離バス予約数ナンバーワンになりたい」(ランダさん)。

(編集協力:岡徳之)

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