1970年代の終わり近くになってグラフィクスとグラフィカルインターフェースが登場すると、アドベンチャーゲームで言葉と画像が一体となり、冒険に没入できるようになる。その先駆けが、1980年代にApple II用として発売された「Mystery House」だ。ポイントアンドクリック式のインターフェースが採用されたため、テキストのコマンドを覚えなくても、プログラムに隠されたストーリーを進めていけるようになった。言葉やモノをクリックすることで、ゲーム内を移動し、キャラクターに話しかけ、謎を解けるようになったのだ。
1980年代の前半には、George Lucas氏がLucasfilm Games部門を創設した(後にLucasArtsに改称)。Lucasfilm Gamesは、普通のファンタジーアクション物語を超えて、「一般的なハイファンタジーやSF」とは違うテーマのアドベンチャーゲームを世に送り出したと評価されているという。こう語るTim Schafer氏は、1989年から2000年までLucasArtsに勤め、海賊をテーマにした「The Secret of Monkey Island」や、フィルムノワール風の「Grim Fandango」などを担当した人物だ。
LucasArtsは、SCUMM(Script Creation Utility for Maniac Mansion)と呼ばれる新しいプログラミングシステムを使って、デザイナーがプログラミングではなくアイデアに集中できる道を切り開いていった。
「われわれの最新技術は実際のところ、一般にビデオゲームのジャンルとして受け入れられていないストーリーテリングのジャンルを選んでいくというものだった」(Schafer氏)
1990年代前半になると、コンピュータはわずか10年前のものと比べて100万倍も高性能になった。ゲームメーカー各社が、その強力になった処理性能を利用して生み出したのが、リアルタイムストラテジーという新しいジャンルだ。こうしたゲームで、プレーヤーは瞬時の判断を求められる。資源を集めて戦闘部隊を作りながら敵を倒していくのだが、一時停止ボタンという選択肢はない。Frank Herbertの小説を原作とする「Dune」などのゲームがここから生まれた。
基本的に、リアルタイムストラテジーにストーリーは必要ない。一連のミッションの合間に起きる戦闘のために、申し訳程度のストーリーが用意されているだけだ。しかし、1994年に「Warcraft: Orcs & Humans」を発売したBlizzard Entertainmentは、関係を定め、戦いの正当な理由になるようなストーリーにプレーヤーを巻き込むという可能性を見いだした。プレーヤーは突如として、アクションとのつながりが強まったと感じるようになった。
「そのような世界を中心にすれば、ゲーム体験がもっと意味のあるものになり、深く没入できるようになるとわかった」。Blizzardの共同創設者であり最高経営責任者(CEO)を務めるMike Morhaime氏はこう語っている。
Blizzardはそれ以来、「Warcraft」「StarCraft」「Diablo」など、いくつものゲーム世界を作り出し、ゲームというものがストーリーテリングの手段になり得ることを証明している。アップデートや続編を通じて何十年も生き続け、成長していくストーリーだ。同社の最も有名なシリーズ「World of Warcraft」は、オンラインロールプレイング版として2004年に始まった。その人気は今も続いており、進化し続けるストーリーのなかで、世界は常に危機にさらされている。
長年「World of Warcraft」のゲームディレクターを務め、現在はBlizzardの最新作「Overwatch」を監督しているJeff Kaplan氏は、次のように述べる。「初期の『World of Warcraft』を見ると、まとまりのあるストーリーラインはなかった。どちらかと言うと、『クエストアクションの背景は、これこれこうなので、がんばってくれたまえ』という具合だ」
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