パナソニックは12月1日、10月に開催した「CEATEC JAPAN 2016」で公開した「メイクアップシート」の技術セミナーを実施した。開発の背景や今後の取り組みについて話した。
メイクアップシートは、特製のシートをプリントアウトし、肌に貼ることでメイクができるというもの。センサを内蔵した鏡「スノービューティミラー」で、顔のシミなどを検知し、その部分をカバーできるシートを専用プリンタで出力する。
手がけたのは、パナソニック技術戦略部事業創出推進課。AI、IoT、ビッグデータを活用した新たなビジネスにチャレンジしていく中で、「ユーザー一人一人のニーズにマッチするよう進化した家電」(パナソニック技術戦略部事業創出推進2課課長の川口さち子氏)をコンセプトに「テーラーメイドビューティ」を目指し開発したという。
「トレンドを調査していくうちに、女子高生を中心に美に対する追求や、美容へのニーズがすごくあることに気づいた。それを形にするには、今の動線を変えずにいつも使っているものを変えることがベスト。それは何かがと考えたら鏡だった」と川口氏は、スノービューティミラーの開発の経緯を話す。
スノービューティミラーには、非接触センシング技術を搭載し、シミ、シワ、毛穴といった人の肌の状態を検出することが可能。肌表面、表面下の状態によりことなる光の反射吸収の違いから、「隠れシミ」までも見つけ出す。
メイクアップシートは、スノービューティミラーで検出したシミなどを情報を元に、カスタマイズされたメイクアップシートを印刷。肌に貼ることでメイクをしたように、肌の悩みを隠せる。
シートの素材は、皮膚の縫合や手術などに使用されているナノシートで、薄さは100ナノメートル程度。印刷顔料には、ファンデーションやコンシーラのようなものを使用しているという。スノービューティミラーにおける肌状態の検出は数秒で、シートの印刷も2分程度だ。インク材料配合や高精度印刷技術といったシートの印刷には、有機ELの技術を応用している。
技術セミナーでは、頬に貼るタイプにシートをプリントしていたが、もう少し大きいタイプのプリントもできるとのこと。ただし、鼻など凹凸のある部分に装着することは難しいとしている。
シートは極薄のため、装着するには専用の器具を使用。水で貼り付けることができ、ファンデーションなどで周囲をなじませれば、つけていることはわからないくらい自然だ。取り外しも水のみでできる。
川口氏は「2020年ころの市場導入を目指す。シートを貼ってメイクをするのが主流になっていると言われるくらい普及させたい。価格的にもファンデーション+コンシーラ程度を目標にしている」と意欲を見せる。課題は、日々必要になるシートの入手方法だ。プリンタを自宅に置くには大きすぎるという声もある。
「化粧品売場のカウンターのような場所で、肌の状態を測定してもらい、シートを毎月届けるなど、定期的に送られているような形がよいのではないかと思っている。今後はその辺りを追求して、実現に結びつけていきたい」(川口氏)とのこと。
将来的には医療用途などへの展開も考えていくという。現在、化粧品メーカーなどにヒアリングをして、パートナーシップを進めている最中だという。
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