シェアリングエコノミーで地域課題を解決する「シェアリングシティ」--湯沢市や千葉市が参画

 秋田県湯沢市、千葉県千葉市、静岡県浜松市、佐賀県多久市、長崎県島原市は11月24日、シェアリングエコノミーによって地域課題の解決を目指す「シェアリングシティ宣言」を発表した。翌11月25日に開催される国際ビジネスカンファレンス「シェア経済サミット」に先立ち、シェアリングエコノミー協会が主宰するイベントにて発表された。

各自治体の首長が「シェアリングシティ宣言」を発表した
各自治体の首長が「シェアリングシティ宣言」を発表した

 シェアリングエコノミーとは、場所やモノ、人のスキルなどの遊休資産を、インターネットを介して個人間でシェアすることを指す。シェアリングシティは、これらの遊休資産の活用や、シェアリングエコノミー事業者との連携によって、空き家や空き店舗の増加、子育て・教育環境の未整備といった地方の課題を解決するために取り組む自治体のこと。海外では韓国のソウルや、オランダのアムステルダムなどが先行した取り組みを実施している。

 世界に先駆けて本格的な人口減少社会に突入している日本は、地方自治体の少子高齢化や人口減少、財政難など、さまざまな問題を抱えている。しかし、いまある問題をすべて公共サービスで解決するにはリソースが足りないと、シェアリングエコノミー協会代表理事でスペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏は話す。「地方やインフラが追いつかないところは、みんなで助け合っていかないといけない時代に突入した」(重松氏)。

シェアリングエコノミー協会代表理事でスペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏
シェアリングエコノミー協会代表理事でスペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏

 シェアという概念を導入することで、「公助」ではなく「共助」によって解決する必要があると、シェアリングシティ宣言に参画した各自治体は考えているという。シェアリングシティの認定条件は、シェアリングエコノミー協会に入会している企業のシェアサービスを2つ以上導入すること。条件を満たす自治体には協会から認定マークが授与されるという。2017年度中に30自治体の参画を目指すとしている。

 現在、シェアリングエコノミー協会には約120社が参画しているという。地方自治体の課題の解決策としては、クラウドソーシングサービスの「クラウドワークス」や「ランサーズ」「ココナラ」を活用した雇用創出や、家事代行の「エニタイムズ」やベビーシッターマッチングの「キッズライン」による子育てがしやすい環境づくり、配車アプリ「Uber」による代替交通手段の創出、空き部屋シェア「Airbnb」による観光振興などを想定している。

 今回、シェアリングシティ宣言をした5自治体も、子育てや不動産、観光など、さまざまな形でシェアリングエコノミーサービスを活用しているほか、今後も新たな取り組みを進める予定。

 秋田県湯沢市は、人口が5万人をきり、少子高齢化率も35%を超えていることから、子どもの送迎や託児を顔見知り同士で頼りあう「AsMama(アズママ)」を活用して、子育て世代の住みやすい街づくりを目指すとしている。千葉市は、市内に幕張メッセなどがあることから、場所シェアサービス「スペースマーケット」と連携して、MICE(国際会議や展示会)誘致のための施設利用を促進するほか、体験型観光プラン「千葉あそび」と日帰り観光体験サービス「TABICA」の連携などをする。

千葉市は「スペースマーケット」と連携して、MICE誘致のための施設利用を促進
千葉市は「スペースマーケット」と連携して、MICE誘致のための施設利用を促進

 静岡県浜松市は全国で2番目の面積を誇る。スペースマーケットやTABICAと連携して、市北部の中山間地域の観光プランを提供するほか、遊休資産を活用して新たな交流人口を生み出す。また、4月からスペースマーケットに市の職員を出向させ、シェアリングシティ推進人材を育成しているという。長崎県島原市は、10月に経営視点にたった観光地域作りを目的に「島原観光ビューロー」を設立している。今後は、島原城などの施設をスペースマーケットに掲載して全国にPRし収益化を目指す。

佐賀県多久市は、クラウドワークスと連携して在宅でもできる仕事を提供する
佐賀県多久市は、クラウドワークスと連携して在宅でもできる仕事を提供する

 佐賀県多久市は、人口が2万人をきり、働く場所が少ないという問題を抱えているという。そこで、クラウドワークスと連携して、在宅でもできる仕事を提供する。また、多久市ローカルシェアリングセンターを設立し、若者や子育て世代だけでなく、ITリテラシーの低い高齢者に対してもクラウドソーシングを通じて仕事を提供し、センターを中核としたサポート体制を充実させるとしている。

 同日の記者発表会では、内閣官房IT総合戦略室の松田昇剛企画官によって、政府としてのシェアリングエコノミーに対する考えも語られた。政府は、6月に閣議決定された「日本再興戦略 2016」で、シェアリングエコノミーを重点施策の1つとして推進。官民による「シェアリングエコノミー検討会」の中で、推進策やガイドラインの検討を進めてきたという。

内閣官房IT総合戦略室の松田昇剛企画官
内閣官房IT総合戦略室の松田昇剛企画官

 11月4日に公開された中間報告書では、シェアリングエコノミーは不特定多数の個人間の取引を基本としていることから、事故やトラブル時の不安が普及の妨げになっていると指摘。シェア事業者が自主的にルールや整備を促進する必要があると説明する。そこで、ガイドラインを設けてシェア事業者がリスクを自己評価するように促すほか、弁護士などを活用して法令調査をしたり、グレーゾーン解消制度を導入したりする予定。さらに、シェア事業者と連携実証するほか、シェアリングエコノミー推進センター(仮称)を政府部内に設置するとしている。

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