ジャストシステムの「エフェメラル(消える)系SNS利用実態調査」(2016年10月)によると、2016年3月に実施した前回調査ではエフェメラルSNSの利用率1位は「Snapchat」だったが、今回はSNOWが1位(56.1%)であり、Snapchatは53.5%だった。Snapchat利用者のうち27.4%が「Instagram Stories」に、25.0%がSNOWに乗り換えていた。
SNOWは2015年に韓国からリリースされた後発の画像加工アプリだ。送りあった写真は24時間で消える仕組みとなっている。顔認識スタンプが700以上あり、30以上のフィルタで自由に写真を加工できる。顔に動物やキャラクターのスタンプをかぶせ、口を開けたり、まばたきしたりすることでアニメーションも楽しめる。ドイツ銀行の調べによると、日本のユーザーの半分、韓国のユーザーの3分の1以上が、10代の若者だとウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。
「今はSNOWだよね」と女子高生たちはいう。「友だちとのやりとりで受けるので使っている」。Instagramではハッシュタグ「#SNOWアプリ」がついたSNOWで加工した写真が1万3000件以上投稿されている。Twitterでもハッシュタグ「#SNOW」がついたツイートはたくさん流れてくる。
SNOWが流行した理由には、スターバックスのカップで顔認識スタンプを使う遊びなど、コミュニケーションのきっかけとなり、ネタとして盛り上がれる点もあるだろう。
しかしそれだけではなく、海外や日本のセレブやタレントたちがこぞって利用し、Instagramに投稿したこともベースにある。そして、SNOWなら「盛れる」。カメラモードにした瞬間に肌がきれいに写る自動補正機能がついており、スタンプによっては自動で目が大きくなるなど、プリクラ的な機能も充実している。スタンプを使えば、自分が隠したい部分を隠すこともできるのだ。
自撮り写真を理由なしにSNSに載せるとナルシストっぽくて嫌われることがあるが、SNOWを使えば載せられる。楽しそうでキラキラして見える。MixChannelもSNOWも他のSNSに掲載し、キラキラっぽく見せることができるアプリであり、それが人気のベースとなっていると考えられるのだ。
女子高生たちは、自分がキラキラして見えることを願っている。他人からキラキラして見えるか否かが彼女たちの幸せであり、行動を規定している。だからこそ、自分がSNSで見かけたキラキラした行動をなぞり、自分もそこの輪に加わろうとする。
彼女たちがSNOWやMixChannelをコミュニケーションや自己表現に使うことは否定しない。しかし、本当に自己表現できているものはそれほど多いわけではない。MixChannelでも、投稿されている動画のうちウケているものは、クリエイティブなものもあるが、ウケたものを真似ただけのものも多い。
高校生の時期は、将来に向けて自分を模索すべきときだ。自分の行動が知らぬ間に誰かに規定されていないか、誰かの目を意識した行動ばかりしてはないか、意識してほしい。そして、本当に自分が望むことや、好きなものを見つけてほしい。保護者は、高校生たちが将来に向けた自分のやりたいことや望むことを見つけられているか見極め、アドバイスしてあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
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