Sady Paulson氏は、Macのスイッチコントロールを用いることで、自分自身をより知ってもらえるようになったと語る。
「多くの人は、私の体の障害について着目しますが、実際の私を知らないままでした。そうなることも理解しています。しかし一度時間をとって私について知ることで、私の能力や情熱を、障害を超えて見てくれるようになるのです」(Paulson氏)。
彼女は、ビデオ編集のスキルを、障害を持つ人々のための社会変革に生かして行きたいと考えている。同時に、同じようにCPで障害を持っている人々に対しても、スイッチコントロールを習得してMacを自分の可能性や、本当の自分を知ってもらうためのプラットホームとして活用して欲しいと願っている。
さらに、テクノロジの発展による可能性にも賭けているという。
「私が今望んでいるのは、他者とのコミュニケーションをよりスピーディーに行えるようになることです。声やジェスチャーを使うように、より素早く文字入力ができることを望んでいます。加えて、HomeKitにも期待しています。いつの日か、iPhoneでコントロールできる私のための自分のスマートホームを作り上げたいと考えています」(Paulson氏)。
Paulson氏との会話を通じて、自分の本来の姿を表現し、また自分らしく生きる手段として、テクノロジが重要な役割を果たしている様子が見られた。また彼女自身が、Appleのハードウェアとソフトウェア、さらにはテクノロジ全体に、非常に深い信頼を寄せていることが伝わってきた。
Appleは製品開発にあたり、アクセシビリティの機能を初めから組み込んだ形で設計している点を強調する。結果として、ユニバーサルデザインを実現している。そして、あまりに自然であるため、気づかないことも多い。
たとえば、音声入力やボイスオーバーは、目の不自由な人にとって入出力の手段として重要な役割を果たしているが、同時に、Siriやハンズフリーと行った場面で健常者も日常的に使用し、同じテクノロジを共有している。
またApple Watchは、歩行する人のカロリー計算も、車椅子の人のカロリー計算もこなす。車椅子をこぐ動作のアルゴリズムを作ったことで、同じハードウェアながら、車椅子の人のカロリー計算も実現するのだ。ウェアラブルデバイスとしては、初の快挙だ。
しかも、腕の動きの認識によるアルゴリズム切り替えのノウハウは、スイミングの泳法ごとにカロリー計測を行う形で生かされている。このようにして、ユニバーサルデザインを意識することで、新たな機能やアイデアを作り出す。
かつて、テクノロジを使いこなすことは難しく、テクノロジを扱えることが人材としての価値を帯びる時代もあった。現在、多くの人々がスマートフォンを持つようになり、テクノロジがあらゆる人々の日々の生活や実現したいことを助ける道具となっている。
こうした環境において、テクノロジと人々の関係性は、健常者のためのデザインだけでなく、アクセシビリティ分野からより多くの学びを得られる。
Appleは長年の取り組みの恩恵を、ユーザーからの信頼や、新たなハードウェア・ソフトウェアの機能という形で、最大限に授かり、同時にそのメリットを、われわれユーザーも受け取っているのだ。
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