朝日新聞社は2016年10月2~4日、イイノホールと帝国ホテルで「朝日地球会議2016」を開催した。2008年より開催している「朝日地球環境フォーラム」を2016年より改称した。地球が直面するさまざまな環境問題、そして国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に含まれる課題について、識者を招き議論をした。
10月2日、東京都知事の小池百合子氏は「挑戦する東京! 日本から世界へ」について講演した。過去3年間環境大臣を務め、環境への取り組みを積極的に行ってきたという小池氏は、東京都が進める環境政策について熱く語った。
小池氏は冒頭で、2015年12月にフランスのパリで開かれた「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」において採択された「パリ協定」について言及し、東京都が積極的に環境政策を推し進め、引っ張っていくとした。
そして「2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、環境先進都市である東京を高らかにうたう」と思いを述べた。そのためには、1人1人そして企業の意識改革が大切だと語り、環境大臣時代に小池氏が実施した政策「クールビズ」を紹介した。
小池氏は、東京都が推し進める「LEDの普及促進」について、衆議院議員時代に「LED普及促進議員連盟」の会長を務めた際、党本部の照明を一部LEDに変えたというエピソードを披露。今後は都が関係する箇所のLED化を徹底して進め、それによってスケールメリット(規模効果)を得て、さらに価格が安くなり普及が進むことを狙いたいと語った。
「5年前に実施した一般社団法人 日本エネルギー経済研究所(IEE JAPAN)の試算によると、日本中のすべての電気をLEDに変えると原発が13基不要になる。5年経った現在は、イノベーションによりその効果が高まっているのでは」と期待する。
また、「エコハウスの普及促進」についても取り組む。都内における最終エネルギーの約3割が家庭部門であり、2000年以降の世帯数増加に伴い、エネルギー消費も増加している。さらに、家庭におけるエネルギー消費の3割は給湯が占めていること、エアコンの暖房が冷房よりも3倍のエネルギーを消費することにも着目した。
そこで、住宅全体のエネルギーを押さえるため、高断熱、太陽光発電、エネファームといった機能を持つエコハウスの普及が大切であり、インセンティブで推し進めていきたいとした。
小池氏は東京都中野区江古田に、自身が「エコだハウス」と呼ぶ自宅を所有する。エコハウスの効果を体感しているからこそ、より強くおすすめできるとにこやかに語った。
さらに、欧州で普及している「自転車シェアリング」についても進めていく方針だ。すでに千代田区、中央区、港区、新宿区、江東区で広域実験をしており、区域を越えて利用することが可能。電動アシスト自転車を借りられる。
小池氏は「オリンピック、パラリンピックの会場、主要な観光地の周辺において自転車が走行しやすい自転車推奨ルートの設定について取り組む。自転車シェアリングはサステイナブル(持続可能)な都市づくりに欠かせないアイテム」と期待を寄せる。
また、小池氏は温室効果ガスの削減を目指し、企業や地方自治体などがグリーンプロジェクトに要する資金を調達する「グリーンボンド」の発行計画も明かした。温室効果ガスの長期的な削減に取り組む事業に対して、投資家による民間資金を導入していくことが必要だという。
「グリーンボンドは国際的に活発になっており、日本の大手生命保険会社もパリ市に投資している。日本のお金がほかの国の環境政策を推し進めている」と指摘。「東京がグリーンボンドを発行することにより、皆さまのお金を東京の環境を良くしていくために使いたい。環境に向かって活用していくお金の流れを作っていきたい。これを1つの大きなムーブメントにしていきたい」との思いを話した。
「水素エネルギー」も活用していく計画だ。東京都では、CO2フリー水素の活用などに向けた協定を福島県、産業技術総合研究所(産総研)と結んでいる。「水素は次世代のエネルギー。大きな経済普及効果も期待されている」とし、水素を利用した蓄電、都営バスへの燃料電池バス導入にも取り組む。
一方、夏場の開催となるオリンピック・パラリンピックの課題となっている「ヒートアイランド現象」については、ミストによるクールスポットなどを設置していく予定。遮熱性の舗装なども投入し、快適な環境でのオリンピック開催を目指す。
最後に、温室効果ガスの削減目標について数値を挙げ、目標達成に向けて取り組みを1つ1つを具体化したいと語った。
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