先進国でたびたび問題として挙げられる「食料廃棄」。英国では年間600万トンもの食料が廃棄され、そのうちのほとんどは食べられる状態で捨てられているという。一方で、英国国内では100万人がフードバンクからの食料供給を必要としている。
このような社会的な2つの問題を結びつけ、解決に導こうとするアプリ「Too Good to Go」が、8月にロンドンで公開された。日本でも展開してほしいアイデアである。
Too Good to Goは、廃棄寸前の売れ残った料理があるレストランをユーザーが探して、それを格安で買うことのできるサービス。デンマーク発だが、先述のような社会的な背景から英国で注目を集めている。
料理のオーダー方法はシンプル。ウェブサイトやアプリ(iOS/Android)からログインすると、現在地から近い料理を提供する店とメニューの情報を教えてくれる。メニューを選び、オンラインで決済し、決められた時間(大抵はランチ後のアイドルタイムやレストランの閉店1時間前)に店に行けば、持ち帰り用ボックスに入った料理を受け取れる。
料理の価格は2ポンド(約260円)から、高くても3.8ポンド(約500円)。Instagramの公式アカウントでは加盟レストランのその日のメニューの写真が投稿されているが、一見残りものには見えない。ユーザーからも「素晴らしい」「とても良いアイデアだ」と高評価。「ベジタリアンメニューを充実させてほしい」「私の住んでいる地域にもサービスを広げてほしい」といったリクエストも多数寄せられている。
現在は英国、デンマークなど欧州の6カ国が利用対象国となっているが、共同創設者のJames Crummie氏いわく、エリアは今後も拡大される予定だ。
Too Good to Goに加盟しているレストランの95%は小さな個人経営。しかし、共同創設者のChris Wilson氏によれば、実際に多くの食料廃棄を出しているのは大手のレストランチェーンだという。同氏は、「チェーン店がより多くの食品ロスを出しているのに、そういった会社の担当者とはまだ話ができていない」と、Evening Standardの取材に対して現状を明かした。
また、その記事によると、Too Good to Goはもともと大学の助成金で立ち上げられたサービスで、Wilson氏は今後も営利目的の運営はしないという。レストランの収益の一部はToo Good to Goに入る仕組みだが、それは今後のサービス拡大のための投資に使われるとのこと。
また、このアプリを通して1ポンド以上を寄付することもでき、それらはユーザーが暮らす各国の食べ物を必要としている人のために使われる。これまで1100食分が寄付されたという。Too Good to Goの理念は、「廃棄されていく食料をそのまま捨てるのではなく、それらに再び価値を与え、食料と地球を救った上で節約もする」というものだ。
ヘルシンキ拠点のスタートアップ「ResQ」も類似したアプリをリリースしている。こちらも、アプリを使ってレストランで廃棄になる予定の料理を探し、通常3~6ユーロ(約340~680円)で購入できる。
Too Good to GoもResQも、レストランにとっては廃棄量を削減できる上に余計なリソースを割かずして利益を得られるメリットがある。また、ユーザーにしてみれば近隣レストランの食事を格安で購入できるというメリットがある。
(編集協力:岡徳之)
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