Pokemon GOの「ポケコイン」に法規制?--弁護士の見方 - (page 2)

「ポケコイン」は前払式支払手段に該当する?

 次に、Pokemon GO内のアイテムであるポケコインが、資金決済法の前払支払手段に該当するか見解を聞いた。

ゲーム内で販売されるアイテムが、前払式支払手段に該当するかどうかについては、各アイテムが上記の要件を満たすかどうかによって決まりますが、Pokemon GOの中で販売されているポケコインは、有償で購入することができ、その財産的価値がサーバ上に保存され、そして、モンスターボールやしあわせタマゴをはじめとする、ゲーム内の各種アイテムと交換できるわけですから、前払式支払手段に該当することに争いはなさそうです。

ポケコインは、Pokemon GOの中だけで交換価値を有しますので、自家型前払式支払手段に該当します。

以前問題となったLINEの宝箱の鍵については、元もとゲーム内の通貨である「ルビー」で買えるアイテムで、宝箱を開けるという機能を持っているものでした。したがって、アイテムにすぎないのか、それとも通貨的機能を有する前払式支払手段なのかという点が議論となったわけです。

「ポケコイン」のビジュアル。
「ポケコイン」のビジュアル。

海外を拠点とする企業でも資金決済法は適用されるのか

 ポケコインは、通貨を連想させるビジュアルや、さまざまなアイテムと交換できるというゲーム内での役割などから、前払式支払手段として認定されることは間違いなさそうだ。そうなると、Pokemon GOを開発・運営する米ナイアンティックにも資金決済法が適用されるのだろうか。

資金決済法は、日本の法律ですので、当然適用される範囲は日本となります。したがって、前払式支払手段に相当するものが海外で発行されていたとしても、原則として、当該発行事業者に対して、同法を適用することはできません。

もっとも、資金決済法の目的は、「資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、当該サービスの提供の促進を図るため、前払式支払手段の発行、銀行等以外の者が行う為替取引及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算について、登録その他の必要な措置を講じ、もって資金決済システムの安全性、効率性及び利便性の向上に資すること」(資金決済法1条)にあります。

ですので、資金決済法は、海外において発行された前払式支払手段については、日本の居住者に対して勧誘することを禁止しています。海外で発行した前払式支払手段を海外から日本の居住者に勧誘することができるのであれば、資金決済法の脱法が可能となってしまうからです。

  • 第36条(外国において発行される前払式支払手段の勧誘の禁止)

  • 外国において前払式支払手段の発行の業務を行う者は、国内にある者に対して、その外国において発行する前払式支払手段の勧誘をしてはならない。

金融庁は、勧誘の有無について、日本国内の居住者が購入できない旨を記載したり、購入を防止する措置を講じたりしている場合には、勧誘を行っていないといえるという見解を示しています。

今回は、Pokemon GO自体が日本版アプリとして日本語で配信されていますし、さらには、Pokemon GOが日本の各地域の実際の地図と連動したゲームであること、ポケコインが日本円で購入できることなどを考えると、ポケコインは日本の居住者に向けて勧誘されており、「日本において発行されている」と考えることについても問題はなさそうです。推測ですが、金融庁も今回、おそらくそのように判断しているものと考えられます。

国内法人の有無にかかわらず、前払式支払手段を発行することはできますので、こうなりますとナイアンティック社に資金決済法が適用されることとなります。

 Pokemon GOのポケコインは、日本国内の居住者に対して勧誘している実績があり、日本法人を持つ・持たないに関わらず、ナイアンティックに資金決済法が適用される可能性は高いようだ。

 ポケコインが前払式支払手段に認定される場合、ユーザーの課金額に応じて供託金を準備する必要が出てくる。Pokemon GOの場合、全世界でプレイされているのだが、供託額はどのように算出されるのだろうか。次のページで説明する。

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