ダイヤを超える“グラフェン”採用--マクセルの超高域イヤホン開発の裏側

 2015年12月に「MXH-RF550」、2016年4月に「MXH-MD5000」とハイレゾタイプのイヤホン、ヘッドホンを発売している日立マクセルから、新たなハイレゾ対応イヤホン「MXH-GD200/100」が登場した。10mmのダイナミック型ドライバを搭載したインナーイヤータイプで、振動板には新素材「Graphene(グラフェン)」を用いた高音質再生が特長。再生周波数帯域は20Hzから70kHzに及ぶ。

日立マクセル「MXH-GD200/100」
写真左から「MXH-GD100/200」
日立マクセル ライフソリューション事業本部マーケティング事業部事業企画部企画課副主管の河原健介氏
日立マクセル ライフソリューション事業本部マーケティング事業部事業企画部企画課副主管の河原健介氏

 「現在、市場で人気のあるハイレゾイヤホンは1万円前後のカナル型。市場の約3割を占め、ハイレゾ音源再生はエントリーユーザーまで裾野が広がっていると感じた。この市場にマッチする商品として開発したのがMXH-GD200/100」と日立マクセル ライフソリューション事業本部マーケティング事業部事業企画部企画課副主管の河原健介氏は開発の経緯を話す。

 グラフェンは、ダイヤモンドより硬い性質を持つ素材。グラフェンコート振動板を採用することで、高周波特性に優れ、ひずみの少ないクリアな音質が得られるという。

  • グラフェンコート振動板を採用した新開発のドライバユニット

  • 振動板とドライバユニット

  • グラフェンの特徴

 マクセルでは、2012年からダイナミック型とバランスドアーマチュア型を組み合わせたハイブリッドタイプや、ダイナミック型を2つ内蔵したデュアル型など、数々のドライバを開発。DVDやBDメディアの蒸着技術を生かした金属コートをドライバに転用するなど、技術開発を推進してきた。

日立マクセル ライフソリューション事業本部マーケティング事業部事業企画部開発課主任技師の芝仁史氏
日立マクセル ライフソリューション事業本部マーケティング事業部事業企画部開発課主任技師の芝仁史氏

 「ドライバに金属コートを施すことで、高音質再生が得られると考えたが、実際にやってみると金属コートをしていないドライバに比べて音質があまり変わらない。トライ&エラーを重ねた結果生まれたのが、MXH-MD5000に採用したベリリウムコート振動板だった」と日立マクセル ライフソリューション事業本部マーケティング事業部事業企画部開発か主任技師の芝仁史氏は振り返る。

 その後、さらに音の伝搬速度が早い素材として名前が上がったのがダイヤモンドだったという。「ダイヤモンドコートを採用しようとしたが、現時点では技術的な問題があり、実現しなかった。この開発途中でグラフェンに出会い、ダイヤモンドを超える硬さ、伝搬速度が得られることで採用を決めた」(芝氏)という。

Grapheneドライバ誕生までの経緯
Grapheneドライバ誕生までの経緯

 素材の良さは20Hzから70kHzという再生周波数帯域にも表れている。ハイレゾ対応ヘッドホンの定義となる40kHzを大きく上回る高域を再生できるのは、高速レスポンスによるもの。「人間の耳の可聴帯域を超えているため“聞こえない音”とも取れるが、音の解像度や余韻に大きく影響し、優れた可聴帯域の音を再生できる自信作」と芝氏は言い切る。

 GD200/100は、ともにグラフェンコート振動板を内蔵し、GD200はステンレス合金と高合成樹脂、GD100はアルミニウム合金と樹脂のハイブリッドボディを採用する。これは金属だけでは抑制できない振動を樹脂部が抑えることで、制振性を確保するため。これにより不要共振を抑え、GD200は艶のある、GD100は透明感のある音を再現する。

 MXH-MD5000のベリリウムに続き、新素材グラフェンを用いることで新たな音作りを実現したGD200/100。グラフェンを用いたラインアップ拡充なども視野に入れているという。

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