クエリーアイは8月24日、同社が開発した人工知能(AI)である「零(ゼロ)」が創作した書籍「賢人降臨(けんじんこうりん)」を出版したと発表した。価格は800円(税別)で、NTTドコモの電子書籍サービス「dブック」で独占配信している。
クエリーアイ代表の水野政司氏によれば、「世界初かはわからないが、少なくとも日本ではディープランニングの人工知能が書き下ろした商用出版物が販売されるのは初めて」という。
賢人降臨は、人工知能である「零」がリカレント・ニューラル・ネットワークという人の脳を模したコンピュータシステム(ディープラーニング)により、福沢諭吉の「学問のすゝめ」、新渡戸稲造の「自警録」を学習させ、その学びを元に創作された書籍。学習させた後に、「若者」「学問を修め立身」「世界を制する」「成功とは」「人とは何を示すもの」──の5つの“お題”を零に与えて書かせたものだ。文字数は、一般的な紙の新書の約半分に相当する6万文字。
なお、学習教材として学問のすゝめと自警録を選んだ理由は、両書とも論旨の明快さや文章の構造や流れがリカレント・ニューラル・ネットワークに学習させるには適していそうな構造だろうと推測した技術的観点。そして、機械に人智を学ばせるに相応しい内容とは何かを熟考した結果だという。
同社によると、人工知能が過去の賢人から学ぶことで、「どのような答えを出していくのか」「技術が過去の賢人の智を蘇らせることができるのか」といった、人工知能が進化していく未来を感じられる作品に仕上がったという。
ディープラーニングが書籍を仕上げるには、どのくらいの時間がかかるのだろうか。「トライ&エラーを含め、2日前後あれば1冊書き下ろせる」(水野氏)と説明する。福沢諭吉に行き着くまでは、人工知能エンジンの研究開発としてそれ相当の時間をかけているが、福澤ができてからそのノウハウで新渡戸稲造を生み出すのは数日なのだという。
また、確率の問題でもあるが、人が読んで大丈夫なものが確実にできるとは限らず、教科書としたデータ(作家や作風)によっては、売り物にはなりにくい文章に仕上がることもあり、見送ったものもあったという。制作の過程の一部は、クエリーアイのウェブサイトに記されている。
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