SNSや企業などに裾野が広がる動画--アドビのツールはどのように進化していくのか - (page 3)

社長プレゼンに「1分動画」を活用する企業も

――さまざまな機能をPremiere Pro CCに集約しているように見えます。最終的に統合するのでしょうか。

ロバーツ氏 制限は設けますが、基本的にはその方向性です。編集者は、今までよりもたくさんの作業をしないといけなくなりました。彼らの生産性を上げるのが狙いです。編集作業に自然に入ってくる機能については統合しますが、専用のツールを使いたい場合にも対応できるように考えています。

 ツールとツールの境界線があいまいになってきています。ユーザーと密に連携して、ワークフローをどのように変化させたいか耳を傾けており、ユーザーが望むような製品を目指しています。

――これまでPremiere Pro CCといえば、映画や作品作りに使用する人が大半でしたが、今ではコミュニケーションのツールであったり企業での活用も増えています。今後は、どのような方向に進んでいくのでしょうか。

ロバーツ氏 非常に重要な指摘です。今まで以上に多くの人が動画を通してコミュニケーションを取ろうとしています。アドビでは、「Premiere Clip」と呼ばれるモバイルアプリを提供しており、そのあたりを探っている段階です。このアプリはデスクトップ版のPremiere Pro CCとも互換性があります。また、これだけでは十分ではなく、年末にも新しいお知らせができるよう準備中です。

デスクトップ版「Premiere Pro CC」と互換性を持つ「Premiere Clip」
デスクトップ版「Premiere Pro CC」と互換性を持つ「Premiere Clip」

フォード氏 エンタープライズユーザーを見てみると、家でテレビを見ているときと同じようなエクスペリエンスを、エンタープライズ側で提供しようとする動きが出てきています。ただし、スキルの構築に時間がかかるでしょうから、アドビとしては、これからもプロフェッショナルへのイノベーションに加え、皆さんが使えるようにもしていきます。

――企業もは、プロモーション、マーケティングなどで動画を活用し始めています。ここ数年の動きはどのように見ていますか。

ロバーツ氏 一つはソーシャル動画です。Instagram、Twitter、Facebookそれぞれで、企業はプレゼンスを高めていかなければならない課題を抱えています。Premiere Pro CCでは、YouTube、Twitter、Vimeoなど各プラットフォームへの動画配信をそれぞれに最適化して配信することができます。Facebookで重要になるメタデータを付与することも可能で、ユーザーの目に留まるように配慮された作りも可能なのです。今後もこの機能を拡張していく予定です。

 動画を一度公開したら、その動画がどの程度のインパクトだったかを把握しなければいけません。アドビであれば、Markeing Cloudから、何人が動画を見たのか、どのようにアクセスしたかを把握できます。

 また、企業での動画利用としては、YouTubeを製品のサポートページとして利用する動きもあります。すでに、多くの企業はマニュアルを作らずに動画で説明するのです。日本でもこれから起きてくるでしょう。このほか、動画を社内のコミュニケーションツールとして使う動きも見られます。社員のトレーニングなどは動画が最も適しています。

古田氏 富士通デザインさんでは、ビデオツールを社内コミュニケーションに利用しています。会社の役員や社長に製品説明のプロジェクトを説明するときに、プレゼンテーションであれば時間がかかるので、1分程度の動画を使って説明することで、プロジェクトの判断が速やかに進むようになったようです。ビデオ制作は大変ですが、役員や社長に説明する時に、非常に有効なコミュニケーションツールとして使われ始めました。

――AR/VRといった今後の技術をどのようにみていらっしゃいますか。

ロバーツ氏 VRはどのように発展するかこちらも見守っています。ARも、5~7年後にARディスプレイがコンピュータモニタを置き換えるでしょう。今はマウスやタッチを使用していますが、今後は空中で手を動かしたUIが発展すると見ています。

――そこに向けたプロダクトなどは。

ロバーツ氏 もちろん検討はしていますし、土台となるようなテクノロジをいろいろ持っています。たとえば、ARを魅力的な形でオーサリングしたいとした時、クリエイターがそのものが没入型空間に入り込み、その場で手を動かしていくことも考えられます。

 また、Marketing CloudではARに対応しましたが、データの可視化はとても難しくなってきています。この分野でもVRにおける実験が始まっています。ただし、将来どこに向かうかはわかりません。今はどんどん実験してユーザーと模索しながら、数年後にはいろいろ面白いものが出てくるのではないでしょうか。

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