いよいよ結果発表、学生ITコンテスト「Imagine Cup 2016」世界大会レポート(後編) - (page 2)

取材・文:神谷加代 構成:羽野三千世(編集部)2016年08月05日 07時30分

 Imagine Cupの大会期間中には、参加国の学生が実際にプレゼンテーションで発表したソリューションやプロダクトを展示するShowcaseも開催された。学生たちの生の声が聞ける機会であるとともに、ソリューションやプロダクトにも直接触ることができる。筆者もさまざまな国のブースを見てまわった。


参加国の学生が実際にプレゼンテーションで発表したソリューションやプロダクトを展示するShowcase

 イノベーション部門で3位に入賞したアメリカは、弱視の患者や、弱視の診察を行う医師を支援するソリューション「HealthX」を開発した。HealthXは、ゲーム感覚で患者が眼球運動に取り組めるもので、患者の視線に合わせてスクリーン内のキャラクターを動かすことができる。キャラクターを上へ移動させたい場合は視線を上へ動かすという具合に、視線の動きでキャラクターを動かしゲームをクリアする。途中で敵が現れた時は凝視すれば、ミサイルで敵を攻撃することもできる仕組みだ。


イノベーション部門で3位に入賞したアメリカの「HealthX」

 ゲーム部門で2位に入賞したインドネシアは、環境問題への意識を高めるゲーム「FROGGY & THE PESTICIDE」を制作した。愛らしいカエルのキャラクターがPesticide(殺虫剤)をBiopesticide(バイオ農薬:農薬の目的として使われる生きた生物)に置き換えながら、制限時間内にステージをクリアする。チームのひとりは「ゲームを通して、バイオ農薬の存在を知ってほしかった」と開発の想いを語った。


ゲーム部門で2位に入賞したインドネシアが開発したゲーム「FROGGY & THE PESTICIDE」

 ワールドシチズンシップ部門の3位に入賞したハンガリーは、安全で正確な患者の診断を支援する仮想現実アプリ「InSimu」を開発した。医学生が患者を診断する際に、どのような質問を投げかければ、安全で正しい診断ができるのかをシミュレーションで学ぶことができる。ハンガリーチームのある学生は「医学生たちは、実際に患者と会って話をする機会が少ない。一方で勉強量も多いことから、楽しんで学べる方法を考えた」と開発経緯を話す。


ワールドシチズンシップ部門の3位に入賞したハンガリーの「InSimu」

 各国のブースでは学生の生の声が直接聞けるチャンスだったため、筆者は学生たちのプログラミング歴がどれくらいかを尋ねた。昨今、日本でも初等中等教育におけるプログラミング教育必修化が決定し、関心が高いからだ。

 その結果、意外にも学生たちのプログラミング歴は短い傾向にあった。「プログラミング歴は1年足らず」「大学に入ってからコンピュータサイエンスで学んだ」という声が多く聞かれ、Imagine Cupでは、デザインやマネージメントなどそれぞれ得意分野を持った学生たちがチームを組んで闘っていたようだ。

 一方で、「テクノロジは課題解決のためのツール」という言葉も学生の口からよく聞かれた。テクノロジで、これまでにない新しいモノや価値を創り、世の中を良くしていきたいという思いが学生からは伝わってくる。ITがアイデアを形にできる柔軟なテクノロジであるからこそ、“自分が何を作りたいのか”“何を変えたいのか”の問いかけを大事にしているようだ。

 Imagine Cup 2016は、ルーマニアの優勝で幕を閉じた。来年はどのような闘いが見られるのか。学生たちが創り出すソリューションを楽しみに待っていたい。


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