映像作品の新たな“出口”としても期待される VODのオリジナル作品だが、従来のテレビドラマや映画とは何が異なり、どんな工夫が必要なのか。オリジナル作品「BeeTV」としてサービスを開始し、 コラボやアニメなど数多くの作品を手掛ける「dTV」を運営するエイベックス・デジタルデジタルビジネス本部 デジタルコンテンツ制作部統括部長の三宅裕士氏と、サービス開始当初から数多くのオリジナル作品を生み出してきた映像制作会社ロボットのコ ンテンツ事業本部副本部長チーフプロデューサーの丸山靖博氏に、VODならではの作品作りについて聞いた。
三宅氏 BeeTV自体がオリジナル作品を配信する映像配信サービスとしてスタートしていますから、2009年から取り組んでいます。最初は、視聴デバイスもケータイのみで、画面も小さい、配信ドラマを作るという知見もない中で始めました。当時のネット動画は、テレビドラマや映画に比べて、正直クオリティが低いというイメージが強かったのですが、ロボットのような著名な制作会社の力を借りて、監督、スタッフをそろえることで、ステータスを上げていきました。
丸山氏 僕が初めて制作に参加したのは「I am GHOST」で、実はGPSドラマだったんです。地上波でも映画でもないメディアでの作品作りということで「ほかではできない企画を」と考えた結果、この作品は逃亡劇なんですが、ケータイのGPS機能とリンクして、ロケ地をめぐることでドラマの追体験ができたり、さらにその場所にドラマの中の出来事が本当に起こったかのような痕跡を残し、視聴者がより作品の世界に没入できる仕掛けを作ったりと新しいメディアだからこそできることをトライする気持ちで作りました。
当時は、技術試験的なプロジェクトが多かったように思うので、実験的な映像制作という意味合いも大きかったと思います。業界的にもドラマや映画とは違う全く別物として扱われていました。
三宅氏 dTVに関して言えば、2010年に2次コンテンツの取り扱いを開始し、視聴デバイスとしてスマートフォンが登場してきたあたりからコンセプトが変わってきました。開始当初は短尺で、「I am GHOST」のような実験的な作りや、累計300万ユーザーが視聴した「キス×kiss×キス」のような配信ならではのエッジの効いた作品を配信してきましたが、現在は、テレビドラマや映画同様のクオリティが求められています。
オリジナル作品は通勤、通学やちょっとした空き時間の“暇つぶし”として見てもらうことが、当初のコンセプトだったので、今は映画やテレビドラマのようなプロフェッショナルなものと、配信ならではのエッジの効いたものに二極化してきているように思います。
丸山氏 制作プロダクションからすると、VODという新しい映像のタッチポイントが増えて、素直に喜ばしいですね。通信やデバイスなどのインフラもそろってきましたから、もっとできることはたくさんあると思います。ここ数年は、予算も増えてきましたし、いわゆるプロコンテンツのような環境が整ってきた。クロスメディア的なプロモーションなどもできますから、今後はさらにコンテンツが増えてくるでしょう。
ただ現状に関してはいろんなことが“できすぎる”とも感じていて、受け手側のリテラシーに本当に合致したものを届けられているのかは難しいところです。ほかのデバイスやメディアと連携していくことはもちろんですが、ユーザーリテラシーの成長とともにさらに大きな市場になると思っています。
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