2016年3月、エイベックス通信放送が手掛ける映像配信サービス「dTV」の会員数が500万人を突破した。2009年に「BeeTV」としてサービスを開始してから約7年。現在は映画、ドラマに加え、シアター、カラオケ、マンガ、ニュースなど独自ジャンルを含め全17ジャンルのチャンネルを持つ、総合エンターテインメントサービスへと進化した。
BeeTVスタート時より配信していたオリジナル作品は、現在もBeeTVジャンルとして、dTVの中で人気作品の一角を担う。内容は映画連動のドラマから、最新映画の先行配信、R15指定の4K作品と多彩だ。映像配信サービス各社が、「差別化を図るキラーコンテンツ」としてオリジナル作品に取り組む中、他サービスに先駆けてオリジナル制作に取り組み、常に話題作を提供し続けてきたdTVは、コンテンツをどう企画し、コラボし、持続しているのか。エイベックス通信放送の編成部編成ルーム課長である森下正樹氏に聞いた。
dTVのオリジナル作品を語る上で欠かせないのは、数多くのコラボレーションだ。映画「悪の教典」と連動したオリジナルドラマ「悪の教典-序章-」を手がけて以降、「相棒-劇場版III 序章」、「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN-反撃の狼炎-」と大型の映画連動ドラマを作り続けている。
「映画作品は、公開前に短期集中型でプロモーションをかけて、一気に世の中の認知度を上げる傾向にある。メディアへの露出を高める中で、オリジナルドラマは出演者が同じだったり、映画の前日譚、後日譚であったりと、映画作品に興味を持たせ、内容に奥行きを与えることができるため、プロモーション効果は高い」と森下氏はその役割を話す。
きっかけとなった悪の教典は、2012年に公開されたR15指定の映画。「R15指定だが、より多くの人に見ていただくにはどうすればいいかと考えた時に、当時、映像配信という新しいメディアであった私たちに声をかけていただいた」と当時を振り返る。
悪の教典-序章-は、映画の主人公である殺人鬼がなぜ誕生したのか、その秘密にまつわるストーリーを、映画の公開前に配信。また進撃の巨人 ATTACK ON TITAN-反撃の狼炎-は、映画の前編と後編をリンクする内容になっており、映画前編の公開直後に配信した。このようにストーリー内容や配信時期を作品によって臨機応変に変えることで、最も効果的に仕上げている。
「どんな映画でも連動作品ができるかというと、そんなことはなく、クリエイティブとプロモーション展開でご一緒できることが第一。映画館への送客が一番できるタイミングを狙って配信をスタートする。当然ながらdTVのユーザーに楽しんでもらえる作品であることも絶対条件で、単なるスピンオフではなく、オリジナルドラマとして成立するかが大事」と森下氏は続ける。
もちろん映画連動作品の制作はdTV側のメリットも大きい。「2011年に『dマーケットVIDEOストア』としてオリジナル作品に加え、映画やテレビドラマの配信を開始した。その際、一気に作品数が増えたためオリジナル作品が埋もれてしまう懸念があった。その中で映画と連動したオリジナルドラマは、注目度が高く、ユーザーからもたどり着きやすい。映画を見たお客様がdTVの作品を見に来てくれるなど相互送客も実現している」。
こうした実績から、4月には映画「アイアムアヒーロー」にも出演する、長澤まさみさん演じる小田つぐみを主演に、原作にも描かれていないエピソードをドラマ化した「アイアムアヒーロー はじまりの日」と、映画「テラフォーマーズ」につながる、火星に降り立つ15人が選ばれるまでを描いた「テラフォーマーズ/新たなる希望」の2作品の配信を開始した。いずれも漫画を原作した実写映画が元になる。
「漫画を原作にしたオリジナルドラマは、原作の認知度が高いこと、関連作品も配信できることから、dTVと親和性が高い。原作を『マンガ』作品として配信できるほか、アニメ作品があればアニメ、ドラマ化されていれば国内ドラマと、関連作品をあわせて配信できるのがdTVの強み」と話す。オリジナルドラマを見に来た人が、関連作品があることに気づいたり、原作ファンがオリジナルドラマを視聴したりと「いろんな人に刺さるように組み立てていく」と森下氏はdTVの手法を明かした。
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