auは何が「大きく変わる」のか--KDDI執行役員の菅氏に聞く

藤井涼 (編集部)2016年07月25日 15時14分
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 この夏auは「大きく、変わります。」――KDDIのテレビCM「三太郎シリーズ」の最新作で登場した新キャラクターの一寸法師とともに表示される印象的なフレーズだ。CMでは、それ以上の言及がないため「一体、何が変わるのか?」と疑問に感じた人も多かったのではないだろうか。

 なぜ、同社はあえてこのメッセージを打ち出したのか。この疑問に対し、KDDI執行役員 コンシューマ事業本部 コンシューマ営業本部長 兼 コンシューママーケティング本部長の菅隆志氏は、市場環境の変化が大きく影響していると話す。「これまでは通信やそれに関わる周辺機器を販売することで、顧客は右肩上がりに増えていたが、現状は頭打ち状態になってきている」(菅氏)というのだ。

KDDI執行役員 コンシューマ事業本部 コンシューマ営業本部長 兼 コンシューママーケティング本部長の菅隆志氏
KDDI執行役員 コンシューマ事業本部 コンシューマ営業本部長 兼 コンシューママーケティング本部長の菅隆志氏

 この背景には、スマートフォン端末の浸透や、総務省による“実質0円販売”の禁止などによって、新規顧客の獲得が難しくなっていることが挙げられる。そのため携帯キャリア各社は、従来のように派手なキャンペーンなどによって顧客を奪い合うのではなく、既存顧客向けのサポートを充実させることで、ARPU(1顧客あたりの月間売上高)を上げる戦略へのシフトを余儀なくされている。

 実際、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、5月31日に開催された夏モデル新商品発表会で、「正直に申し上げて、(総務省による)タスクフォースの影響で、3社間でお客様が流動しなくなっているのは事実。お客様の声を本当に聞いているのか、ニーズにあった対応をしているのかという、“大反省”があって大きく変えていこうと考えた。地道なところから会社を変えていく」と、変革に向けた決意を語っていた。

長期ユーザー向けの優遇策を提供

 そこで同社では4月に、ユーザーひとりひとりのニーズを理解して、その期待を超える体験価値を提供するため、「auお客様体験価値改革プロジェクト」を発足。その統括責任者に選ばれたのが菅氏だ。プロジェクトの第1弾として「Qua」シリーズの新端末や、「世界データ定額」などの新サービスが発表されたが、特に目玉となるのが長期利用するユーザー向けの優遇施策である会員制プログラム「au STAR」だ。

長期ユーザー向けの優遇施策「au STAR」
長期ユーザー向けの優遇施策「au STAR」

 au STARでは、ショップでの待ち時間を減らす対策として、ネットで事前に来店予約ができる「au STARパスポート」を8月から開始する。また、同じく8月にはさまざまな特典がもらえる「au STARギフト」も開始する予定だ。毎月1日分の世界データ定額利用料を提供するほか、3カ月に1回エンタメコンテンツ1作分をプレゼントする。また「誰でも割」(2年契約)を更新するとギフト券3000円分をプレゼントするという。

 さらに、auを4年以上利用している長期ユーザー向けの特典として、11月から「au STAR ロイヤル」を提供する。auの契約年数とデータ定額料に応じて、税別1000円ごとにWALLETポイントを毎月還元するというものだ。たとえば4年以上のユーザーなら毎月20P、16年以上では100Pをもらえるという。

契約年数とデータ定額料に応じて、WALLETポイントを毎月還元する「au STAR ロイヤル」
契約年数とデータ定額料に応じて、WALLETポイントを毎月還元する「au STAR ロイヤル」

全国のショップを活用して満足度の向上へ

 これらの施策に加えて、auが「大きく変わる」上で重要になると考えているのが、顧客の声を直接聞ける全国のauショップの活用だ。「KDDIには4000万人のお客様がおり、リアルなショップも2500店舗ある。この辺りをしっかり活用することで、次のステージに飛躍できるのではないか。全国の店舗には、若い人から高齢者まで幅広く訪れるので、お客様により豊かなライフデザインを提案したい」(菅氏)。

 同社では4月から、店舗や代理店のスタッフ向けのCX(カスタマーエクスペリエンス)研修を店舗に出向いて進めているという。具体的には、各店舗の店長に機種変更や、アフターサービス、料金変更など、それぞれの応対のどこに問題があるのかを共有し、それをショップのスタッフにも伝えることで接客の質を改善していくというものだ。

店舗スタッフ向けのCX研修の様子
店舗スタッフ向けのCX研修の様子

 実際にトライアルの結果、売り上げが上がるなどの効果が出ていることから、2016年度の上期は100店舗で実施し、「年度内に500店舗で自律的に回せるようにしたい」(菅氏)という。

 また、店舗で厳選された食品や日用品が買える「au WALLET Market」のラインアップを増やしていくことで、店舗でのストレスとなっている待ち時間を有意義なものに変えていく。さらに今後は、「auでんき」や「auの生命ほけん」「auのローン」などの金融商品も充実させることで、顧客が端末購入以外で店舗へ向かう目的や頻度を増やしていきたいと語った。

 「保険やローンの契約には、なかなか自分からは行かないもの。ショップにもこんなものがあるんだと気軽に入れるようにしているが、スタートとしては非常にいい滑り出し」と菅氏は手応えを語る。ただし、保険などは案内するスタッフが有資格者である必要があるため、対応店舗の増加には時間がかかるとみている。

 大きく変わると宣言はしたが、「一気にジャンプアップはできないので地道な活動だと思っている」と菅氏。同社ではKPI(重要業績評価指標)を顧客満足度ではなく“愛着度”と考える。今後も来店頻度などのデータを解析するなどして、顧客ひとりひとりに合った体験価値を届けることで、auに愛着を持ってもらいたいとしている。

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