福岡市と九州大学、NTTドコモ、ディー・エヌ・エー(DeNA)は7月8日、2018年度下期に九州大学伊都キャンパスにおいて、自動運転バスのサービス実現を目的とした「スマートモビリティ推進コンソーシアム」の設立に合意したと発表した。福岡市で共同会見を行った。
このコンソーシアムでは、DeNAがフランスのイージーマイルと提携し、7月7日に発表したばかりの自動運転バスによる交通システム「ロボットシャトル」の基盤を活用。そこにNTTドコモが持つ通信ネットワークや人工知能などの技術を取り入れ、サービス開発を進めていくとのことだ。
具体的には、見通しの悪い交差点などにセンサを設置し、車両のカメラでは認識できない人や車の情報をバスや遠隔監視センターに伝えることで安全を確保する「路車間協調技術」や、バス車内のサイネージを使い、話しかけることで経路案内などをしてくれる「音声エージェント」、さらには人工知能を活用し、乗車数を予測し最適なルートを選び、待ち時間を減らす「運航管制技術」などを導入し、実証実験を進めていくとしている。
その第一ステップとして、まずは自動運転車両の走行データを収集したり、路車間協調のためセンサを地面に埋め込んだりするところから始めていくとのこと。2017年度下期からは、取得したデータやセンサなどを盛り込んで走行試験をしながら、そこで得たデータを基に改良を進め、2018年度後半の実証実験に向けた準備を進めていくとしている。
九州大学の理事・副学長である安浦寛人氏によると、日本では700万人が公共交通の空白地に住んでおり、過疎地では公共交通機関が人材不足などで提供できない所も増えているとのこと。だが一方で、自動運転を公共交通などで実現するには、技術だけでなく制度面の規制緩和も必要になってくると、現在の課題について話す。
そこで今回のコンソーシアムによる実証実験では、完全な無人での自動運転を実現する「レベル4」の一歩手前として、運転席はないが緊急時に対応するオペレーターが乗車する状態で運行する「レベル3.5」での運行を想定しているとのこと。伊都キャンパスは九州大学の敷地内ではあるものの、敷地が広大であるうえに1万6000人が活動しており、バスや自動車、歩行者なども通っているほか、急こう配や信号などもある。「1つの街としての環境を実現している、技術実証の環境としては世界的に稀有な環境」(安浦氏)とのことで、そうした環境での実証実験が、公道での実験にも有効な問題提起をもたらすと安浦氏は考えているようだ。
福岡市長の高島宗一郎氏は、福岡で自動運転に関するコンソーシアムを設立した背景について説明した。福岡市は国家戦略特区に指定されていることから、それを活用して社会課題を解決する取り組みとして自動運転に着目したとのこと。そこで、国内で自動運転に積極的に取り組んでいるDeNAに高橋氏からアプローチをかけたほか、「人類が直面する社会的課題に対して最先端の研究を実施してきた」(九州大学 総長の久保千春氏)という九州大学とも意見交換をしていたとのこと。そうしたところ、九州大学側からNTTドコモに声かけがなされ、4者でコンソーシアムを結成することになったとのことだ。
NTTドコモが参加を決めた理由について、同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は「我々はIoTビジネスに力を入れており、自動車と交通、特に自動運転は有望な分野だと考えており、自動車にまつわる社会的課題を解決するため、パートナーと連携してやっていきたいと考えていた」とのこと。そうした折に、九州大学から声がけがあったことから参加を決めたとし、将来的にはこの取り組みを、5Gのネットワークにも生かしていく考えを示している。
一方、DeNAの代表取締役社長である守安功氏は、九州大学の構内が実際の公道に近いこと、そして「行政サイドを含め安全かどうかの調整が入ることが予想されたが、高島市長がリーダーシップで何でも実現すると話してくれた」と、民間企業では難しい行政側の問題に、高島氏が積極的に協力する姿勢を見せたことが、参加を決めた大きな理由になったと話している。
高島氏は今回の実証実験により、福岡で自動運転に関して一歩先行く取り組みを実現したいとのことで、「スピーディーにチャレンジを続けながらいい結果とテクノロジをどんどん出して、福岡から自動運転技術に貢献できればいいなと思っている」と、高島氏は話している。
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