2015年9月に日本上陸を果たしたオンラインストリーミングサービス「Netflix」が、オリジナル作品で本格攻勢を仕掛けてきた。6月に配信を開始した全10話から成る「火花」は、190カ国でオンラインストリーミング配信を開始。視聴者の約半数は海外からのアクセスだという。
日本の作品を世界に発信するという“公約”を果たしつつ、話題作である火花を映像化することで日本での存在感を高める。Netflixがハリウッド級とも言われるオリジナル作品を生み出す背景にはどんな思惑と実現するための秘策が隠されているのか。Netflixでチーフ・コンテンツ・オフィサーを務めるテッド・サランドス氏に聞いた。
日本は元々映画やテレビドラマに対して、素晴らしい歴史があります。ただ、それを国外へ発信していくことが難しかった。その部分をNetflixが担えているのは素晴らしいことだと思っています。
非常に強力な専任のチームを設けていまして、そのチームのメンバーがストーリーを選出し、脚本家、監督、出演者などを選び出しています。もちろん日本やそのほかの地域にもスタッフはいますが、中心となっているのは米国のメンバーで、彼らは特に出張が多い(笑)。各地域のスタッフやクリエーターとやりとりすることで、Netflixにふわさしい作品を各地域で製作できます。
ただ、専任チームの仕事はあくまで選出まで。その作業を終えたあとは、クリエーターにすべてをおまかせしています。作品の企画を正しく選ぶこと、企画と製作を切り分けることが大事なのです。
グローバルベースで60億ドルを投資しています。2016年は600時間、2017年にはその2倍となる1200時間までオリジナル作品の編成を増やす予定です。
競合との差別化を図るという意味はもちろんですが、オリジナル作品は私たちと加入者との関係を深める役割も果たしてくれます。独占的な作品の配信は、よりNetflixを好きになっていただける効果が大きい。非常に重要な役割を担っているのがオリジナル作品だと言えるでしょう。
規模ですね。Netflixには世界中に視聴者が8100万人いますから、非常に大きな投資ができます。また多くの視聴者がいるからこそ、素晴らしい監督、脚本家、出演者たちをひきつけられます。素晴らしいオリジナル作品を提供することで、会員数も継続して伸ばしていける。こうしたエコシステムが着実にできているところがNetflixの強みです。
ここをより強固にするため、今は収益よりも投資を重視しています。映像配信サービスには、世界的成長を遂げるチャンスがこれから出てきますから、この機会を逃さないためにも、投資を続けていく意向です。
もちろん、米国などNetflixのサービスが確立された市場では、しっかりとした利益も出していますし、現在開拓中の市場においても利益の出せる形へと移行していきます。地域によっては、数年かかるものもあると思いますが、その辺りのスケジュール感はすでに折り込み済みです。
わかりません(笑)。グローバルベースの大きな投資としてとらえているので、知りようがありません。
火花は視聴者の約半分が海外からのアクセスでしたが、それを可能にした裏側の仕組みとしてレコメンデーション機能が大いに役立っています。例えば、筋書き通りにはいかない「ビッグブラザー」のような作品を好むユーザーには、「テラスハウス」のような作品を推奨するようにしています。
また作品の傾向だけでなく、字幕で見ているか、吹き替えで見ているかといったデータも重要で、どんな作品をどういう風に見ているかという視聴者の習性、動向を見極めて、そこから作品をレコメンドしています。
Netflixではすべての作品を月額見放題として提供していますが、この月額見放題制はレコメンドシステムと大変相性がいいんですね。見放題であれば、10分視聴してみて、気に入らなかったほかの作品へと切り替えられますが、都度課金制ではそうはいかない。見放題制だからこそ視聴者も冒険心をもっていろいろな作品にチャレンジできます。
私自身、作品製作に深く関わっている身ですから、選ぶのは大変難しいです。その中でもあえて選ぶとすると、今時点だと「ゲットダウン」ですね。今までの作品の中で最も映画的な作りになっています。この素晴らしい作品を製作できたことを誇りに思っています。
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