FinTechは“発明との組み合わせ”の革新--日本銀行・山岡氏の見方 - (page 2)

 また、FinTechの普及のためには「ネットワークのオープン化」も必要だと山岡氏は話す。たとえば現金は、基本的には誰によって保有され、どう使われているのかは分からない物理的な通貨だ。こうしたオープンかつプライバシーに配慮できる現金の性質は大きな利点だと説明する。

 この一方で、デジタル通貨などの決済ネットワークは、クローズドかつコンピュータが動いていないと使えないという課題がある。今後、電子決済の取引はますます増えることが予想されることから、デジタル技術を活用したオープンネットワークが求められるのではないかとの見解を示した。

デジタル決済にも現金のようなオープンネットワークが求められる
デジタル決済にも現金のようなオープンネットワークが求められる

 さらに、高齢化対応もFinTech普及の鍵を握ると山岡氏は話す。高齢者でなくとも、複数の銀行の暗証番号を覚えることは難しいが、たとえば生体認証などでこうした文字列による認証が不要になれば、多くの消費者がFinTechに目を向ける可能性もある。「高齢者に『FinTecnの方が安全』というイメージがつけば信頼の担保への大きな力になる」(山岡氏)。

ビッグデータやAIの活用も期待されているが、プライバシー保護との両立も無視できない
ビッグデータやAIの活用も期待されているが、プライバシー保護との両立も無視できない

ブロックチェーンで銀行は不要になる?

 一部では、ビットコインなどで使われている技術であるブロックチェーンや分散型元帳によって、今後は銀行が不要になるのではないかという声もある。

 これ対し山岡氏は、フリーバンキング時代に地方紙幣が乱立したことから、これらを統一することを目的に中央銀行が設立されたと成り立ちを説明。その上で、「将来的に中央銀行がなくても帳簿を管理できる世界がくるのはいいことかもしれない」と語る。

日本銀行 決済機構局長の山岡浩巳氏
日本銀行 決済機構局長の山岡浩巳氏

 ただし、短期的に見通せる未来では、信用を担保する情報処理のコストを考えると、日銀の役割は当面は変わらないとの考えを示した。「たくさんのお金が乱立して、その価値が変動するというのは、社会的に見て望ましい状態ではない。中央銀行である必要があるかは別として、世の中が煩わしいことを考えなくても済む、基本的な決済手段は必要。これからも、その責任を担えるように頑張りたい」(山岡氏)。

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