Evernoteは6月22日に都内でメディア向け説明会を開催した。米国本社から来日したCEOのクリス・オニール氏と、日本・アジア太平洋地域代表である井上健氏が、今後のプロダクトの方向性やビジネス戦略などについて語った。
オニール氏は、Googleにおいてカナダ支社の責任者、Google Glassを生み出したGoogle Xプロジェクトの事業責任者などを経て、2015年7月に創業者であるフィル・リービン氏(現Evernote会長)に代わってEvernoteのCEOに就任。以来、“選択と集中”を掲げてEvernote社内の組織強化と財務健全化、プロダクトの中核機能を中心とした改善・強化を指揮してきた。
「Googleにおけるさまざまな経験の中で、チームビルディング、事業の規模拡大、カナダ人らしく負けず嫌いな気質という、自分自身が持つ3つの資質がはっきりしてきた。これらの資質を生かして、Evernoteを新たな次元へと成長させたい」(オニール氏)。
オニール氏は、ユーザー数が全世界200を超える国・地域で2億人に到達しようとしている点、保存されているノートの数が50億件を超えている点、非英語圏のユーザー数が約半数に達している点など、これまでの8年間でEvernoteが築いてきたグローバルにおける実績を紹介。
こうした実績の背景として、世界で2億人を超えるナリッジワーカーがいると言われている「ナリッジ型経済の進行」、世界的な「スマートデバイスの普及拡大」、そして人間の頭脳では対応しきれないほどの情報がさまざまなチャネルで飛び交う「情報過多社会」という、昨今のユーザー環境を示す3つのキーワードを掲げた。
その上でオニール氏は、今後Evernoteが目指すプロダクトの進化について、「思考プロセスを促進する」という方向性を示した。「“人間の(記憶する)脳を拡張する”ことがEvernoteの当初掲げた発想だが、人間の脳は記憶だけではない。情報を合成したり、整理したり、複数の情報を結び付けたりしながらイマジネーションを働かせることも、脳の機能のひとつだ。“脳の拡張”がEvernoteの掲げた理想とするのならば、単に記憶するだけでなく、ユーザーが考えるプロセスを支援する必要がある」(オニール氏)。
続けて、「Evernoteの将来は“アイデア”にフォーカスを当てていく。ユーザーの思考によって生まれたアイデアを保存し、保護し、育み、共有できるようにする。アイデアは人間のあらゆる活動の原動力であり、無限の可能性がある。それを引き出すことがEvernoteのミッションだ」と語り、さまざまな情報ノイズが飛び交う現代社会において、Evernoteを“必要な情報を整理して思考とアイデアの創出を促進する空間”にしていきたいと、プロダクトが目指す価値を説明した。
またオニール氏は、日本市場について「ユーザーエンゲージメントにおいても、ビジネス規模においても、日本はグローバルで最も成功している市場の1つ。Evernoteにとって東京は(2010年に設立された)初めての海外拠点であり、創業初期の段階から投資やリセラーとしてパートナーシップを構築できたのも、日本企業のサポートがあったから。Evernoteのこれまでの歩みを振り返っても、日本市場の成長は非常に重要なものであり、なくてはならない存在だ」とその重要性を強調した。
日本における今後の具体的なビジネス戦略については、井上氏が「国内に14社ある提携リセラーの拡大、教育機関向けのビジネス強化などを推進するとともに、日本で成功したビジネスモデルをアジア地域へと拡大させていく」と説明。日本やアジア各国から生まれたフィードバックを、今後のプロダクト開発に生かすとした。
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