JBLやマークレビンソン、ハーマンカードンと、高級オーディオブランドの取り扱いで知られるハーマンインターナショナルだが、そのビジネス内容は、イメージしているものとは少し異なる。
コネクテッド・カー、コネクテッド・サービス、プロフェッショナル・ソリューション、ライフスタイル・オーディオと4つある事業部のなかで、最も大きな売上を担っているのは、自動車関連を担うコネクテッド・カー。2015年にはインフォテイメントを手掛けるコネクテッド・サービス事業部を新設し、カービジネスに積極的な投資を続ける。
一方で、長く企業イメージを形成してきたオーディオ部門は、スピーカやアンプなど本格オーディオを"屋台骨”と位置づけつつ、ヘッドホンやBluetoothスピーカといったカジュアルラインの拡販に取り組む。
就任から3年、高級オーディオを中心に据え保守的だった企業姿勢をイチから見直し、前年比で二桁成長を実現する新たなハーマンインターナショナルへと導いた代表取締役社長の仲井一雄氏に話しを聞いた。
商品ミックスが大きく変わりましたね。当時は高級オーディオが8割、残りが2割でしたが、現在は高級オーディオが3割で、ヘッドホンやBluetoothスピーカ、カーオーディオなどが7割を占めています。ハーマングループ全体でも、売上は前年比で二桁成長を続けていますが、その中でも日本市場は各国を上回る実績を残しています。
3年前は、高級オーディオに特化した販売戦略だったので、保守的なビジネスに凝り固まっていると感じました。オーディオ市場自体も伸び悩んでいましたし、業界全体の先細り感は否めません。このまま3年、4年と続けていくのは難しいと判断しました。
一方で、ヘッドホンやBluetoothスピーカは、市場自体が盛り上がりつつありましたが、ハーマンとしては手付かずの市場で、やれる余地があった。そちらに舵を切り、取り組んできたのがこの3年です。
ヘッドホンやBluetoothスピーカは、グローバルで見ると売上を伸ばしていましたが、日本市場はやや出遅れた感がありました。そこを今は積極的に開拓しています。
市場自体は盛り上がっていますが、ヘッドホンもBluetoothスピーカもとにかく競合が多いジャンルなので、売上を伸ばしていくのはかなり大変です。特に日本は国内メーカーが強いですし、強力な海外ブランドも次々と登場してきます。
その中でどう戦っていくか、と考えた時にやはりハーマンの強みは「音」です。同じ価格帯のモデルでも音を比べてもらえれば絶対に負けません。ヘッドホンもスピーカも音響製品ですから音がいい方がいいにきまっている。そうした高音質モデルというイメージが少しずつ浸透してきているのだと思います。
もともと日本市場は、高級オーディオを取り扱っていた時代から、重要な位置にあり、日本が牽引していた時代もありました。それに対してポータブルオーディオ関連は、ほかの地域が売上を伸ばすなか、取り組みが遅れたため、日本市場が小さくなってしまった。そこを挽回している最中です。
売上自体は順調に伸びてきていますから、この3年の動きとしては、上手くいったのではないかと思っています。
それは大変よく聞かれる質問なのですが、実際やってみるとそんなことはなくて、今までJBLやハーマンカードンを知らなかった若い人や、カジュアルに音楽を楽しんでいた人にブランド自体が浸透したという印象です。
もちろん高級オーディオをおそろかにするわけではなくて、ここは私たちの"一丁目一番地”なので、きちんと確保しつつ、新しいビジネスも伸ばしていくという姿勢は一貫しています。
ただ、昨今のオーディオ市場を見ていると、アナログレコードプレーヤー人気が復活したり、ハイレゾオーディオが浸透してきたりと、本格オーディオの機運が高まっているように感じます。
ヘッドホンやBluetoothスピーカを通してハーマンのファンになってくれたお客様に、もっと興味があればハイファイオーディオの世界がありますよ、というアピールをしていきたいですね。高級オーディオもやりつつ、ポータブルオーディオも手掛ける。そうしていかないとオーディオファンの裾野は広がりません。例えば試聴会を開催すると、毎回同じお客様が来てくださる。それ自体は大変光栄ですが、新しいお客様に来てもらえる努力はし続けなければなりません。
ハーマンではオーディオの裾野を広げいくことを始めていて、取り組みの1つとして2014年に東京・六本木に日本初となる直営店「HARMAN Store」をオープンしました。ヘッドホンやBluetoothスピーカを楽しみつつ、試聴室には高級オーディオを完備する。そうしたオーディオの流れをつくっていくことは、オーディオ業界にとって今後も大事になってくると思います。
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