「衛星LTEシステム」で災害時のネットワークを早期復旧--ソフトバンクが試作 - (page 2)

衛星LTE基地局を平常時にも活用

 このLTEを用いた衛星通信システムで、ソフトバンクが目指しているのは災害時の通信手段の確保だけではないと、藤井氏は話す。衛星通信は災害時には大いに活躍するものの、日常的に利用されている訳ではない。そこで将来的には、平常時も衛星LTE基地局を用いることで、山間部など地上の基地局だけではカバーできないエリアを広くカバーする際に活用することを想定してるようだ。

藤井氏は、衛星と地上の基地局を、同じ周波数、同じシステム、同じ端末で運用することで、災害時だけでなく広いエリアをカバーするのにも活用する考えを示している
藤井氏は、衛星と地上の基地局を、同じ周波数、同じシステム、同じ端末で運用することで、災害時だけでなく広いエリアをカバーするのにも活用する考えを示している

 ただし、平常時に衛星LTE基地局を活用するには、地上波の基地局と同じ周波数帯を用いることから、干渉の問題が発生する。それを回避するため、ソフトバンクではLTE-Advancedの要素技術であり、複数の基地局が協調して動作し、干渉を防ぐ「eICIC(enhanced Inter-cell Interference Coordination)」という技術を採用。

 地上基地局と衛星基地局の電波を細かく分割し、共有することで、平常時は地上基地局を多く用いて高速通信を確保しつつ、災害時には衛星基地局に無線リソースを多く割いて、通信手段の確保を最優先にするなど、状況に応じて柔軟にリソースの割り当てを変える仕組みを整えているという。

衛星と地上、双方のLTE基地局を共用するため、LTE-Advancedの要素技術であるeICICを用い、同じ周波数帯の電波を時間で分割し、共有する仕組みを採用している
衛星と地上、双方のLTE基地局を共用するため、LTE-Advancedの要素技術であるeICICを用い、同じ周波数帯の電波を時間で分割し、共有する仕組みを採用している

 ただし、この仕組みで干渉を起こさないためには、衛星基地局と地上基地局の時間を、高い精度で同期させる必要がある。そこでソフトバンクでは、GPSとリスニング機能を用いた高精度の同期技術を確立。1μ秒以下の同期を実現することで、問題を解決したという。

 藤井氏によると、衛星基地局から地上基地局まで、同一の周波数、システム、端末で実現するのは世界初の技術だという。今後は実証実験を進めながら実用化の道を探るとしているが、このシステムを実現するためには、3GPPによる標準化の問題だけでなく、実際に対応する衛星を打ち上げる必要があるという、大きなハードルを抱えている。

 衛星の打ち上げのためには、ソフトバンクだけでなく国家間での調整が必要であるなど、さまざまな課題があるとのこと。だが同社としては、他国のキャリアと協調しながら、2020年代の早い段階を目標に実現したいとしている。

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