続いて、イスラエルに本拠を置くSundaySkyとドコモによる協業事例が紹介された。SundaySkyは、顧客個人の契約情報や利用しているサービス内容に合わせてカスタマイズした動画「スマートビデオ」を自動的に生成・配信できる技術を開発。NTTドコモ・ベンチャーズは同社への出資を6月3日に発表しているが、ドコモは同社と2015年2月から協業し、このスマートビデオを契約者向けのアップセリングにおいて活用しているという。顧客ひとり一人に合わせて異なる内容のビデオメッセージを発信できる点が特長だ。
ドコモのマーケティング部長である日向達氏は、スマートビデオを活用してパーソナライズされたマーケティングの必要性について、通信業界を取り巻く市場環境の変化を挙げて説明した。「携帯電話の市場は成熟期を迎えており、新規販売は難しい状況になっているにも関わらず、MNPが始まったことで市場の流動性は高まっている。新規ユーザーを獲得するためのマスプロモーションから、他社から顧客を守るためのOne to Oneコミュニケーションが重要になってきている」(日向氏)。
ドコモは最も契約者数を抱えており他社からは顧客を狙われているが、同社が保有する顧客情報、契約データを掛け合わせることで、顧客が必要としている情報は何かを的確にカスタマイズし、提供することでエンゲージメントを高められると考えているという。このアウトプットがテキストメッセージから動画コンテンツになることで反応率が高まり、興味関心の喚起や内容理解の促進に繋がるというのだ。「テキストメールだと、膨大なニュースメールの中でドコモからのメールがパーソナライズされた情報だと理解してもらうことは難しい。それがビデオメッセージになったことで、訴求力が大きく向上した」(日向氏)。
では、このスマートビデオを活用したビデオメッセージをマーケティングに取り入れたことで、どのような効果が得られたのか。日向氏によると、従来のテキストメッセージの反応率が6.8%だったのに対して、動画によるOne to Oneのコミュニケーションでは22%という高い効果を上げられたのだという。「ユーザーからは“自分だけの動画だったので特別感がある”、“自分の情報が動画になっていて面白い”といった声が寄せられ、パーソナライズのメリットが十分に発揮されたのではないか」(日向氏)。今後は、現在行っている機種変更や新料金プランの訴求だけでなく、ドコモが展開するさまざまなサービスのレコメンドにも拡げることで、エンゲージメントを強化したいとしている。
SundaySky代表のShmulik Weller氏は、「スマートビデオは、将来ブランドコミュニケーションにおけるパラダイムシフトを起こすのではないか。コンシューマが求めているのは、 自分のニーズに合った体験であり、価値のある情報。スマートビデオが採用された事例では、視聴開始率や視聴完了率も高い。その高い満足度が次のアクションに結び付いているのではないか。今後はマーケティングコミュニケーション方法として標準的なものになっていくはずだ」と語り、今後の方向性としてパーソナライズされたメディアが増加することを示唆した。
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