ベトナムで「漫画」といえば、そのほとんどが日本のものを指す。本屋へ行けば、「ドラえもん」「名探偵コナン」「クレヨンしんちゃん」が並び、本棚の前に子どもが座り込んで読んでいる光景は珍しくない。
漫画好きの若者であれば、「ドラゴンボール」や「ワンピース」「スラムダンク」といった少年漫画のタイトルも知っているだろう。世間一般では、“漫画=子どもの読み物”という考えが根強い。
Comicolaで活躍する漫画家たちは、幼い頃から日本の漫画を読んで育った世代。仕事を辞めて制作に専念している作家もおり、その可能性に賭けている。Duong氏によると、サイトの想定読者は14歳以上、そこには「漫画は子どもだけの読み物ではない」という強いメッセージが込められている。
Comicolaの収益モデルについてだが、サイトでは無料で漫画が読める上に、広告も見当たらない。一体、どのように収益を上げ、運営しているのか。そこにはDuong氏の漫画家だけには収まらないビジネスセンスが光る。
収益源は3つ。「書籍の販売」「人気作品のグッズ販売」、そして「漫画スクール」だ。クラウドファンディングで集まった資金から手数料は取らず、金額の65%は出版費用に、35%は作品を売り出すための動画作成やイベントなどのプロモーションに充てられる。つまり、作品が成功しなければ利益は一切得られないということだ。
もっとも大きな収益源は漫画スクール。受講料は、1日2時間の1クラスが2週間、合計28時間で350万ドン(1万7000円程度)。原価が低い書籍やグッズなどの物販よりも、技術などのノウハウを売るスクールの方が利益率は高い。教師の漫画家はComicola出身で、身内ということを考えれば外部から呼ぶよりも人件費を安く抑えられるだろう。
次の一手をDuong氏に尋ねたところ、「電子書籍のプラットフォームを作る」という。現在、Comicolaの作品はサイトに画像がそのままアップロードされるのみ。収益の柱になっているもの(書籍、グッズ、スクール)はすべてアナログコンテンツで、ITはプロモーションには生かしているものの収益にはつなげていない。最大のコンテンツである作品たちがそのまま収益につながれば、Comicolaに大きな利益をもたらすかもしれない。
さらなる展開という点では、アニメ化や映画化、そこからのグッズ展開といった可能性も考えられるだろう。そこまで到達してはじめて「産業」と呼べるのかもしれない。しかし、それは日本にならった話。発想次第ではベトナム独自の路線を見出し、誰もが想像し得ない道をたどるかもしれない。
(編集協力:岡徳之)
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