一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は5月25日、定例の年次記者会見を開催、2015年度の事業概要などについて報告した。
都倉俊一前会長の任期満了に伴い、4月より会長に就任した作詞家のいではく氏は、冒頭の挨拶で「会長就任時、職員には2つの事をお願いした。1つは、明るく元気にあいさつすること。もう1つは、権利を信託してくれている権利者のため、そして楽曲を利用してくれる方々のために、と考えて行動すること」と説明。「JASRACは税務署以上に冷たい、といった評価を得ないよう活動しようということ」と就任の意気込みを語った。
2016年度の使用料徴収額は約1116億7000万円(前年比0.7%減)と微減。「演奏等」の分野ではコンサート市場が過去最高規模に活況だったことに加え、社交ダンス教授所以外のダンス教室の管理を開始、その契約締結が順調に進んだことなどから前年度実績を上回った。
依然としてCD生産実績の減少が続く「オーディオディスク」は前年並みの微減。「ビデオグラム」については、DVDなど映像ソフトは前年並を維持したものの、パチンコ機器での利用減少やパッケージ型ゲームの不調(スマホ向け配信ゲームへの移行)などに伴い前年度実績を下回った。
そのほか、前年度中にJASRACとの正式契約が進んだサブスクリプション型サービス(ユーザーとの契約期間中に楽曲、動画などを視聴できるサービス)を含むインタラクティブ配信は大きく数字を伸ばしている。
活動関連では、放送事業者(NHK、日本民間放送連盟)と著作権管理事業者(JASRAC、ジャパン・ライツ・クリアランス、イーライセンス)による「放送分野における音楽の利用割合算出に関する検討会」(5者協議)において、著作権管理事業者が管理する作品の利用割合算出方法が合意。2015年から適用を開始しており、放送局側の全曲報告・電子化などによって放送利用の実態がより反映できるようになったとしている。
この6月で任期満了を迎える理事長の菅原瑞夫氏は、2015年度の活動について「私見ではあるが、新しい動きに向けたとっかかりとなる1年だった」と評価。「TPP交渉に伴う著作権死後保護期間の延長、そして長年の課題であった戦時加算の解消に向けた方向性も見えた。実務面では、サブスクリプション型サービスに対応した規定変更が実施に入れたことが大きい」と評価。また、競合している著作権管理事業団体が合併したことについても「私から何かいうことではないが、これも新たな流れのとっかかりだと思う」とした。
現在の音楽著作権管理市場については「米国と異なり、日本ではまだ、録音物が市場に残っている状態。1件ずつの売り上げが落ちているのは確かだが、コンテンツの数自体は減っていない」と分析。「各レーベルの営業方針によるが、パッケージと配信、両面のバランスをどうとっていくのか、になると思う」とした。
3期6年の理事長職を振り返ったコメントを求められると「音楽市場を取り巻く環境、特に技術が大きく変化する中で、デジタル関連の対応はできてきたと思う。いかなる状況においてもJASRACは盤石である、という指摘があるが、座っているだけでお金が入ってくるわけではない。アヒルの水かきではないが、職員が必死に動いてこそ権利者の権利を守り、安定した分配が行える。その姿勢が崩れることはない」と力強く語った。
2015年、JASRACからの著作権使用料分配額が多かった国内上位3作品を表彰する「JASRAC賞2016」。金賞は、年末の日本レコード大賞受賞でも話題を集めた「R.Y.U.S.E.I」が受賞。音楽ソフト(CD・DVD)や有料音楽配信サービスでヒットを記録したほか、カラオケでも多く利用され、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEが踊る「ランニングマン」の振り付けも話題を集めた。
銀賞は、2015年度の金賞作品「恋するフォーチュンクッキー」が2年連続でランクイン。銅賞は、ウエディングソングの定番として結婚披露宴やカラオケでの利用を伸ばした「糸」が受賞した。
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