Instagram、Vine、MixChannel、Snapchatなど、コンテンツを軸としたSNSが若年層を中心に広まりを見せている。こうした中、歌を投稿できる音楽SNS「nana」が10代を中心に支持され、登録ユーザー数が200万件を突破した。なんと、ユーザーの6割以上が中学生・高校生だという。
nanaは、ユーザーが投稿した歌を聞いて、他のユーザーがコメントを付けたり、「拍手(お気に入り)」を送ったりすることができる。好きな音楽でつながれるため、コミュニティも自然と発達し、複数のユーザーによるセッションなども盛んだ。
また、公式イベント「nanaフェス」によるリアルの場を提供しているほか、非公式のユーザーイベントがいくつも立ち上がっている。ネット・リアルを含め、歌を中心としたコミュニケーションを支援している。
nanaは、2012年よりサービスを開始しているが、ここ最近ユーザー数の伸びが顕著だという。1日の投稿楽曲数も5万曲に達している。その理由と、若者ならではの音楽文化、SNSの使い方、今後の展開もあわせて、nana music代表取締役社長の文原明臣氏に話を聞いた。
ユーザー数が伸びたタイミングは2つあります。まずは、2013年末にiOS 6から7に上がるタイミングでフラットデザインに対応しました。その際に、App Store上のスクリーンショットやタイトルを変えたところ、新規ユーザー数が6倍に伸びたのです。さらに伸びの角度が付いたのが、2015年初頭です。このころ、ニコニコ動画の有名な歌い手さんや読者モデルといったインフルエンサーがnanaを使い始めており、そうした人がSNSで拡散したことで、さらにユーザーが増えました。
特に戦略的なマーケティング活動を実施したというわけではありません。nanaのユーザーが投稿した歌をTwitterなどでシェアすることで、ほかのユーザーにも存在を知ってもらうケースが多いですね。口コミやSNSからの流入は継続的にあり、どこかのコミュニティで話題になって突発的に伸びたという傾向なども特にありません。
今まさにトレンドに乗れている最中だと感じます。ニコニコ動画が2006年に登場し、2010年ぐらいに大幅にユーザーが増えましたが、スマートフォン全盛の今ではツイキャスやMixChannelが伸びています。ただし、可処分時間が細分化する中で、動画を撮る・見るのにも労力が必要だと感じています。特に動画の撮影では、きちんと見せようとするマインドも働くため、部屋を掃除したり、女性であれば化粧をするなど手間もかかります。歌であれば、スマートフォンのマイクに歌って投稿するだけなので手軽です。
ただし、ツイキャスなどのライブ配信サービスと併用しているユーザーも多く見られます。作品として非同期で聞いてもらうためのnanaと、リアルのコミュニケーションが欲しい場合やユーザーが空いた時間で配信したい場合のツイキャスと、目的に合わせてツールを使い分けている印象です。
ニコニコ動画が作り上げてきた文化の延長線上に僕らがいると感じています。二次創作的な同人文化、初音ミクなどボカロ(ヤマハが開発した音声合成技術「Vocaloid」を使用した製品群の略称)のオリジナル曲、それを歌ってみた・弾いてみた、MMD(MikuMikuDanceと呼ばれるCG動画作成ツール)で動画を作ってみたなど、コラボレーションも多いです。
また、上の世代では“一過性の文化”と言われがちなボカロですが、若年層では一つのジャンルとして定着しています。中学や高校の休み時間にリクエストされて流れるようになっており、POPSほどマジョリティではありませんが、オタク文化だから特殊といった概念もありません。nanaでもボカロやアニソン楽曲が人気です。ニコニコ動画の歌い手がボカロ楽曲を歌い、それで好きになったユーザーも多いですね。
ニコニコ動画を利用している10代のユーザーからすると、そもそもPCがない、オーディオインターフェイスを持っていないなど、PCベースのサービスだと投稿までのハードルが高いのです。また、ミキシングの技術も必要で、歌い手がミックス師を募集することも多くあります。nanaでは、そういったスキルが無くても投稿できるため、取っつきにくかったユーザーでも歌い手、弾き手になってアーティスト気分が味わえます。
そうですね。実感として、ニコニコ動画の文化に触れてきた人たちが多い印象です。もちろん、インディーズで音楽活動されている方や、プロは目指していないが音楽が好きだという方も多くいらっしゃします。
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