セッションでは、ロボット開発に関する興味深い研究についても触れられた。石黒教授は、ある学会の懇親会で「電車の中で人間に席を譲りたくなるロボットを作る」研究を提案したという。
ロボットやAIは知識やパワーで人間の能力を超えつつあるが、さらに社会的モラルまで教えられるようになるかもしれず、それがロボット開発の可能性を広げることにもなる。本当の意味で人に寄り添えるロボットの開発が究極だが、人間同士でそれができない現状では、まだまだ実現は難しいと言えそうだ。
話はここ10年で急速に進んできたと言われる「意識の解明」にまで広がる。「もしかしたらあと5~10年で意識を持つロボットが登場する可能性があるのではないか」という塚本教授に対し、石黒教授は「ロボットはあたかも”気持ちがわかっているようにふるまう”だけで、そもそも”気持ちがわかる”というのがどういうことなのかがまだわかっていない」とコメント。
ただし、ロボットが意識を持っていると感じるのは人間側なので、人間を模倣して錯覚させる研究を進めれば、そこから「意識を持つとは何か」というメカニズムが解明されるかもしれない。さらに、赤ちゃんが社会生活の中で意識を確立していくのと同じで、アンドロイドを人間のように育て、対応していくと意識を持つ可能性はあるという。
「ウェアラブル」の話では、実生活で10年以上ウェアラブルグラスをかけ続けてきた塚本教授は「実社会にいる目の前の人とつながるのがウェアラブルの目的」であり、コミュニケーションの方法として今後確立されるだろうとしている。石黒教授も、プレイステーションVRなどのゲームからVRが浸透し、バーチャルな世界に慣れた次にそれを常時身に付けるウェアラブルが受け入れられるようになるかもしれないと言い、研究者から見ても技術的な実用化が進んでいることがわかる。
セッションの最後には全体のテーマである「幸せ」が取り上げられた。石黒教授の研究チームではアンドロイド「ERICA(エリカ)」を幸せにする研究も行われいるが、学生によって幸せの目標はそれぞれ異なり、幸せの形はいろいろであることがよくわかるという。その上で人間とロボットは共存関係にあるので、お互いに何が幸せかを考える必要があり、ロボットが幸せに暮らす社会が理想の社会なのかもしれないとコメントしていた。
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