2015年、日本への訪日外国人旅行客数は年間1970万人を超え、2014年の1330万人を大きく上回りました。日本政府も、訪日外国人旅行客(以下、訪日客)を日本経済発展の要として捉え、2020年までに4000万人、2030年までに6000万人という更なる上積み目標を掲げています。
また、2015年1月には中国人旅行客に対するビザの緩和等、国策としても訪日外国人誘致に取り組んでおり、まさに訪日外国人旅行客の“インバウンド市場”は、日本を挙げて取り組んでいる今、最も熱い市場と言えます。
訪日客に向けたプロモーションはインバウンドプロモーションと呼ばれ、多種多様なサービスを必要としています。例えば、2015年の流行語にもなった“爆買い”。2015年2月、春節と呼ばれる旧正月の連休で日本に来た中国人旅行客が、円安の流れに乗って日本国内で多額の買い物をしたことが注目されました。
この時に必要とされたのは「中国語が話せるスタッフの充実」や「値札やメニューの中国語表記」など、店舗の多言語化対応です。人材会社や翻訳会社への問い合わせも増えたのではないでしょうか。
2015年の日本は、「何もしなくてもやってくる外国人」に対して、「日本国内でどう対応するか」がカギでした。背景として、中国人に対するビザ緩和など、インバウンド市場において影響が大きい施策が多数実施された結果とも言えますが、訪日客が日本に来てからのことを考えるのがインバウンドのトレンドでした。
しかし、2016年以降はその視点を変えていく必要があるのではないかと考えています。
日本政府観光局(JNTO)が発表しているデータによると、2014年度世界各国・各地域への外国人旅行客数が最も多かった地域はフランスで8300万人超。同じアジア地域である中国は5500万人超となっています。同じランキングで、日本は世界22位、アジアでは7位でした。仮に2020年に4000万人という訪日客数を達成したならば、世界で6位以内、アジアで2位に入ることになります。
ところが、外国人観光客がおよぼす経済効果に注目しているのは、日本だけではありません。例えば、タイ。日本同様観光立国を目指し、積極的に外国人旅行客の誘致を進めています。2015年の外国人旅行者数は2988万人で、2016年には3200万人に到達する見込みです。アジアの中では比較的早く、1960年に観光庁が設置され、「アユタヤ遺跡」に代表される遺跡群とプーケットなどのリゾート地を観光資源としてもち、外国人旅行客に対するビザの緩和にも積極的です。
上記のように、各国が外国人旅行客獲得のために施策を打っており、外国人旅行客からすれば、選択肢が増えている状況ですので、「ほっておいても日本に来る外国人」は減少していくでしょう。とすれば、日本がさらに訪日客を上積みするためには新たな施策や取組みが必要です。
そこで、将来を見据えたひとつの視点として、「受け入れ」から「獲得」のインバウンドプロモーションを展開していくべきだと考えます。
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