外国語対応だけでは“ささらない”--訪日旅行客を獲得する3つのポイント - (page 2)

アウンコンサルティング2016年04月27日 08時00分

 では、「獲得」のプロモーションとは何なのか。ここでやっとこのコラムの本題に入ります。前述した通り、「日本」という国は外国人旅行客にとって選択肢の1つでしかありません。認識されず、選択肢にすら入っていないことも考えられます。その中で、この国に行きたいと思える情報を発信していかなければなりません。

 つまり「獲得」のプロモーションは、日本を旅行先として決定してもらうための情報発信や認知の向上を、外国人旅行客が現地にいるときに実施すべきものであると言えます。

 この「獲得」プロモーションには、3つのポイントがあります。

  1. 「スケジュール」を考える
  2. 旅行先決定の「プロセス」を知る
  3. 効果的な「ビジュアル」を把握する

 このポイントを抑えた上で外国人に情報発信すれば、訪日客を獲得できる可能性が大幅に向上します。今回は弊社の得意分野でもあるウェブプロモーションを使って例を挙げていきます。

「スケジュール」を考える

 スケジュールには2つの意味があります。訪日客が旅行に来ると想定される連休のある時期、そしてその旅行先を決定するための検討期間。スケジュールを把握するのは、世界でプロモーションをする際に一番重要であると言っても過言ではありません。

 日本で言えば、旅行に行くような長期連休は大きく4つで、ゴールデンウィーク、夏季休暇(お盆休み)、シルバーウィーク、冬季休暇(年末年始休暇)です。日本人の旅行検討期間は半年~1カ月前なので、ゴールデンウィークの旅行広告を出すのであれば遅くとも年明けからスタートする必要があるのです。

 同じように世界各国・各地域、休みのある時期も違えば旅行検討期間も違います。それぞれの国のスケジュールを把握しておかなければ情報を届けたい人に届けることもままなりません。。

主なアジア地域の大型連休と検討期間を記載した表が以下になります。

主なアジア地域の大型連休と検討期間 主なアジア地域の大型連休と検討期間
※クリックすると拡大画像が見られます

 今回は訪日客数の多いアジア圏の国を対象としました。中華圏は基本的に春節(旧正月)が主な連休となりますが、その他にも3日程度の連休が複数あります。香港などはイギリス領の風習が残り、クリスマスなどキリスト教に関連する休みもあるため注意が必要です。国・地域毎の歴史や風習に則ってスケジュールを考えることで、最適なプロモーションを最適な時期に展開することができます。

旅行先決定の「プロセス」を知る

 皆さんは旅行先を決めるとき、どのようなプロセスをたどるでしょうか。日本では旅行先の情報はテレビ、雑誌、周囲の人の評判などが多く、それに加えて治安や日本語が通じるなどのポイントが海外旅行先の選定基準になってくるかと思います。

 では、海外ではどうでしょう。以下の図をご確認ください。

旅行先決定に至るまでのカスタマージャーニー 旅行先決定に至るまでのカスタマージャーニー
※クリックすると拡大画像が見られます

 私たちはこれを「カスタマージャーニー」と呼んでいます。対象となる旅行客(カスタマー)が、どういった経緯(ジャーニー)で旅行にいたるのかを示しています。

 これを見ると、中国人客はSNSで旅行先を探す場合が多いとわかります。中国国内ではネット広告に加えて、SNS「weibo」やコミュニケーションサービス「WeChat」といった独自のSNS文化が形成されています。台湾では、パワーブロガーによる記事が情報として有力視されるなど、日本とは異なるプロセスを歩んでいます。このため、それぞれの国のマーケットを事前に把握する必要があります。

効果的な「ビジュアル」を把握する

 ここでいうビジュアルとは、「バナー」や「サイト」など、ユーザーから見える主に画像を使った領域です。化粧品ブランドのサイトを例に見てみましょう。

  • 資生堂「ELIXIR」ブランドサイト(日本)

  • 「相宜本草」ブランドサイト(中国)

  • 「erb」ブランドサイト(タイ)

 並べるとわかるように、色の使い方や画像の配置などが大きく異なります。また、国によって女性の綺麗の基準も異なるため、起用されている女性にも傾向が異なることがわかります。

 このように、国によって受け入れられやすいビジュアルは異なり、訴求ポイントも変わってきます。日本で作ったものをそのまま翻訳したものでは、正しくプロモーションできず、効果は得られにくいと考えられます。

2016年のインバウンド市場は「受け入れ」から「獲得へ」

 今回は大きく3つのポイントを紹介しましたが、国や地域異なれば日本で有効でも異国で通じない部分が多くなっていきます。実際にインバウンドプロモーションをするときには、さらに詳細なマーケティングポイントを踏まえ、事前調査が必要です。

2016年のインバウンド市場は「受け入れ」から「獲得」へシフトするキッカケの年にすることが大事です。「獲得」へシフトするのであれば、上述の3つのポイントを抑えて戦略を決めましょう。このことが日本全体を見た時に、2020年で4000万人、2030年には6000万人と、世界中から旅行先として選ばれる日本に通ずるのだと考えます。


アウンコンサルティング株式会社

1998年創業、2005年11月東証マザーズ上場。翻訳ノウハウを生かし、業界ではいち早く海外展開を推し進めてきた多言語ウェブプロモーションのパイオニア企業。主にウェブプロモーションサービスの中でもSEO・SEMを得意としている。アジア8拠点(東京、沖縄、台湾、香港、フィリピン、タイ、シンガポール、韓国)に展開し、2000社を超える実績を持つ。各国の現地ネットワークを生かし、インターネット経由での各国・各業種別のインバウンドプロモーションを提案している。

一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 会員

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]