文部科学省は4月22日、児童生徒が1人1台PC環境で利用する「学習者用デジタル教科書」の在り方を検討する有識者会議「デジタル教科書の位置付けに関する検討会議」の第7回会合を開催。これまでの検討の「中間まとめ」の大枠を発表した。同会議での検討結果は「政府への提案」であり、国としての決定事項ではない。しかし、同会議が文科省の中核組織である「初等中等教育局教科書課」の中で行われていることもあり、政府方針の決定に大きな影響力を持つと考えられる。
同日の会合では、中間まとめに向けた論点整理として、「デジタル教科書は紙と併用し、費用は義務教育で使うものでも保護者が負担する」といった内容を含む以下のような検討結果が提示された。
義務教育段階、高等学校段階ともに、デジタル教科書は紙の教科書と併用することが適当である。授業では、従来通り紙の教科書を使うことを基本とし、学習内容に応じて、教科の一部で紙に代えてデジタル教科書を使うことを認める。デジタル教科書の使用をどの程度認めるかは最終的には各自治体の教育員会の判断になるが、国として一定の考え方を示す。ただし、中長期的な視点では、今後の技術革新の可能性を考慮しては紙とデジタルの選択制を取る選択肢を排除するべきではない。
義務教育で使うデジタル教科書は無償であることが望ましいが、紙の教科書との併用を前提とした場合、両方を無償にするのは困難。教材費として保護者が負担することが現実解になる。デジタル教科書に定価は設定できない。しかしながら、保護者負担になることを考慮してなるべく廉価に抑えることが必要。中長期的には無償化を検討していくべき。
デジタル教科書が紙の教科書に置き換わるのであれば学校・家庭を通じた1人1台PC環境の整備が前提になるが、併用する場合は、デジタル教科書閲覧用の端末は、自治体や学校の状況に応じて、個人所有、学校備品のどちらの形態も認める。
デジタル教科書の児童生徒への提供方法については、各児童生徒への記録媒体の配布、教育委員会や学校のサーバから学習者端末へダウンロード、教科書会社から学習者端末へ直接配信--の3パターンが考えられるが、いずれの方法も認める。
デジタル教科書は、紙の教科書の内容を不足なく取り上げるものとする。紙との内容の同一性は教科書発行会社が保証し、改めて検定を経る必要はない。デジタル教科書のみに含まれる動画や音声コンテンツについては、基本的に”検定を経ることを必要としない教材”と位置付ける。デジタル教科書の質を上げるためには、IT関連企業の知見を活用することが重要だが、個別に検定を経ないのであれば、デジタル教科書の制作者は紙の教科書を作っている教科書発行者に限定するべき。
デジタル教科書の構成要素はコンテンツのみとし、デジタル教科書を使用するためのビューアの標準化は、国と発行者が連携して検討していく。
同会議の座長を務める東北大学大学院 教授の堀田龍也氏は、「2020年度から導入される次期学習指導要領では、アクティブラーニングなど新しい学び方を取り入れることが話し合われている。今この時期にデジタル教科書について検討しているのは、その学びの環境を国が責任をもって整備するため」と説明。デジタル教科書の導入は、次期学習指導要領の展開と同じ時間軸で進める方針であることを示した。
次期学習指導要領は、小学校で2020年度、中学校で2021年度、高校では2022年度から導入される。堀田氏は、2020年度までにデジタル教科書の導入を実現するために、短期的には現行の教科書制度の中で、紙とデジタルの教科書をうまく併用する仕組みを整えていくとした。「デジタル教科書を併用していくうちに、その学習効果や良さが認知されるだろう。紙かデジタルかを選択できるようにしようという議論はその後だ」(堀田氏)
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