在宅ワーカーが観光通訳をサポート--城崎温泉でクラウドソーシングの実証実験

 2020年までに訪日外国人客数を4000万人以上に倍増する目標を政府が掲げるなか、対応に向けた動きが地方観光地で始まっている。兵庫県豊岡市は老舗温泉地の城崎温泉で大幅に増える外国人観光客をサポートする取り組みとして、全国初となるクラウドソーシングを活用した動画チャット通訳サービス「クラウド通訳」の実証実験を4月4~28日まで実施中だ。

老舗温泉地の城崎温泉
老舗温泉地の城崎温泉

 「クラウド通訳」は、専用の動画チャットアプリを搭載したスマートフォンを使い、施設のスタッフと外国人観光客とのやりとりをリアルタイムで通訳サポートするサービス。

 城崎温泉内に光回線敷設を行った関西電力の子会社であるケイ・オプティコムがその活用事例として豊岡市に提案し、約29万人が登録するクラウドソーシングサービスの「シュフティ」を運営するうるるが通訳の運用やアレンジを担当する。動画チャットはFacePeerが開発する「FaceHub」というプラットフォームを利用し、アプリをタップするだけで通訳を呼び出せるようにしている。

 スマホやタブレットのテレビ会議機能を使って、コールセンターが観光通訳をサポートするサービスはすでにいくつかあるが、在宅ワーカーを活用することで人件費は比較的抑えられる。普通のAndroidスマホを使っているので操作も簡単で、操作するのは施設スタッフだけでよく、観光客に機材の使い方を説明する必要がないといったメリットもある。

 すでに何度かサービスを活用しているという土産もの店のスタッフは、「店内を移動して実際の商品をカメラで見せながら通訳してもらえるので、その場に通訳がいるようにお客さまとのコミュニケーションがスムーズになり、簡単な会話を覚える機会にもなっている」という。

  • 「クラウド通訳」スマホのアプリをタップするだけで簡単に通訳が呼び出せる

  • スマホ片手に店内を移動しながら手軽に通訳サービスが利用できる

 城崎温泉地内にある14の施設にスマホを設置し、うるるがアレンジした国内外の在宅ワーカーが朝9時から夜10時まで1日あたり2~3名で対応する。ワーカー側にとっては通訳の資格がなくても、一般的な英会話スキルがあれば仕事ができ、所在地も問われないため働く機会が増える。通訳者は米国のユタ州に住む日本人や、日本語の堪能な外国人などさまざまだ。今回は英語のみでの対応だが、他の言語も使いたいという要望があった場合も、クラウドソーシングなら柔軟な対応が可能なる。


実証実験には城崎温泉に7つある外湯を含む14の施設が参加しており、店頭などにサービスを案内が貼られている。

 豊岡市を訪れる外国人観光客は前年比で2.3倍にも伸びており、その9割以上が城崎温泉の観光客で占められている。ミシュランガイドで2つ星を獲得してから外国人観光客が急増しているという。以前より、日本文化に興味が高い個人やグルー旅行客が通訳やガイドなしで訪れる人も多く、通訳の必要性を感じていたものの、費用対効果に見合う対応ができない状態にあった。その点でクラウド通訳ならコストも抑えられ、気軽に導入できるのではないかと期待されている。

 ただし、クラウド通訳は現時点はまだ仮のシステムであり、サービスの内容や価格も決まっていない。今回はシステムの品質などクラウドの実用性も含め、どこまで利用者のニーズに対応できるかさまざまな課題の洗い出しを行う。城崎温泉と同じような通訳サービスに対する課題を持つ観光地は全国にあると考えられ、クラウド通訳が地域のニーズにどれだけ応えられるものになるのかが注目されるところである。

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