こうしたプレスリリースの使い方は、実は特許出願をしなくても有効です。「防衛」のために特許出願をするといった説明がたまになされてしまうのですが、これはまったくの誤り。
他社に取られたくなければいち早く詳細を開示してしまえばいいのです。審査のルールは他社の特許出願の申請完了日において権利化しようとする発明が知られているかどうかなのですから、プレスリリースという形であっても、すでに知られていれば他社の審査が通ることはないわけです。
たとえば自社ウェブサイトに記載しただけだと信頼性の問題があるものの、プレスリリースという形であれば、後で紛争になったときにも客観的にしっかりと示すことができます。
実際、プロダクトの小さな改善については特許出願をするのではなく、積極的にプレスリリースを出していくことで注目を集めるとともに他社の権利化を阻止する方針を採っているスタートアップもあります。
あくまで各種メディアへの発信が目的ではありますが、プレスリリースもぜひ、知財戦略の一環としての活用を検討してみてください。
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大谷 寛(おおたに かん)
弁理士
2003年 慶應義塾大学理工学部卒業。2005年 ハーバード大学大学院博士課程中退(応用物理学修士)。2014年 2015年 主要業界誌二誌 Managing IP 及び Intellectual Asset Management により、特許分野で各国を代表する専門家の一人に選ばれる。
専門は、電子デバイス・通信・ソフトウェア分野を中心とした特許紛争・国内外特許出願と、スタートアップ・ベンチャー企業のIP戦略実行支援。
Twitter @kan_otani
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