日本も注視すべき、高齢化・農業国タイの「スマート農業」戦略とは

ICT活用社会を目指すタイの戦略

 2020年までに「ICT活用社会」の実現を目指すタイは、「スマートタイランド2020構想」という国家戦略を掲げている。

 この戦略は、「強い経済」「公平な社会」「環境に優しい社会」の3つの柱から成り、タイの情報技術通信省(MICT)と民間団体とが連携して施策を実行するもの。農業、教育、健康、医療、環境などあらゆる産業をICTを活用することで改革するための案が盛り込まれている。

 戦略の主要な施策の1つに、「サイバーブレインプロジェクト」がある。政府や民間企業、個人事業主が発表する公的な情報などを、ICTを駆使して1つのプラットフォームに集約するもの。より多くの人びとが簡単に情報にアクセスできるようにすることが狙いだ。

 この施策は、これまで科学技術が活用されていなかった分野において大きな効果を発揮すると考えられている。特に「強い経済」の柱の中にも盛り込まれている、「農業」の分野での改革の効果に期待がかかる。

ICTで農業従事者の生産性を高める

 農業はタイの経済を支える主要産業だ。同国は、国土の4割が農地であり、農業がGDPに占める比率、農地面積、農業雇用、農村人口など多く関連指標は、他のASEAN諸国と比べても高い。

 しかし、課題は1ヘクタールごとの生産性がASEAN諸国と比較して低いこと。その主な要因は、農業従事者の教育レベルの低さにあると言われている。国民の4割が農業に従事しているが、経済的な貧しさが理由でほとんどの農家の教育レベルは初等教育で止まってしまっている。

 教育レベルが低い農家は市場に対する知識や情報に乏しく、バイヤーに対する価格交渉力も弱い。また、市場への供給量や市場価格の情報を生産者が持たないため、生産や出荷の調整ができず、農産物の価格が下落したり農作物の保存コストがかさんだりする傾向にある。

 そこで、情報技術通信省はタイ国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC)と連携し、農業をよりスマート化して、農業従事者の能力向上を支援しようとしている。具体的には、農家向けサイバーブレインプロジェクトを立ち上げ、農作物の栽培方法や市場価格といった情報を提供することで、格差を無くそうとしているのだ。

通信キャリア大手Dtacもスマート農業を支援

 タイでは通信キャリア大手のDtacも農家向けの情報配信事業に力を傾けている。農作物の市場価格をリアルタイムで配信したり、作物の栽培方法などのノウハウをコンテンツ化し、農家や一般消費者が容易に情報へアクセスできるようなサービスを提供している。SMSサービスの「*1677 Farmer Information Superhighway(以下、Superhighway)」と、スマートフォン向けアプリの「Farmer Info」がこれにあたる。

「Farmer Info」アプリのアイコン
「Farmer Info」アプリのアイコン

 Superhighwayは、SMSを経由して農業に関する情報をテキストメッセージで配信するサービスだ。「*1677」に電話をかけ携帯電話番号を登録すると、農業に関する国内の最新情報が1日に最大6つ、無料で自動配信されてくる。さらに、農業に詳しい専門家に電話で相談することもできる。

 同サービスを実際に利用する農家のRungnabha yodmaiさんは、「サービスを通じて得た情報をもとに化学肥料からバイオ肥料に切り替えたところ、材料費が4700バーツまで削減できた」という。生産性の向上に一定の成果が表れているようだ。

 一方のFarmer Info(iOS/Androidに対応)は、機能的にはSuperhighwayと同様だが、米、穀物、生花、果樹、野菜、畜産、漁業の市場価格をリアルタイムで確認できることが特徴だ。この価格は、首都バンコクにある6つの市場の価格をもとに決定されている。また、農作物の栽培方法に関する動画コンテンツも配信されている。

(編集協力:岡徳之)

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