「囲い」という存在をご存じだろうか。囲いとは、主に生放送配信者に対して特定の配信者にのみ配信したり、配信を止めさせたりするような「囲い込み」行為からきた言葉だ。狂信的な応援だけでなく、金銭支援なども目立つようになっている。
囲いの存在によって、10代の少年たちが人生を狂わされたり、狂わせようとしている例がある。今回は、囲いと支援される側の少年たちの問題について見ていきたい。
囲いの存在が有名になったのは、浅草の三社祭でドローンを飛ばすとして、祭りの主催者に警備強化させ、15歳の少年が威力業務妨害の疑いで逮捕された一連の事件だろう。
ニコニコ生放送などで配信をしている少年は、配信の中味が過激で知られていた。たとえば、川崎市の中1殺害事件では、逮捕された少年の自宅前からネット中継したことで一躍話題となった。少年はほかにも、長野県善光寺でご開帳をドローンを使ってネット中継した上、墜落させて騒動を起こしたり、国会議事堂やJR有楽町駅付近でドローンを飛ばそうとして、警察から厳重注意を受けながらその様子をネット配信したりするなど、行動が過激化していた。
もともと少年は、有名な中高一貫校に進学したものの、なじめずに市立中学に転入。しかし、卒業するまでほとんど登校せず、配信業に没頭した。少年の母親は、中学を自主退学して配信業で食べていきたいとした少年を心配し、PCを捨てたり、小遣いを与えないなどしてきたという。
ところが、逮捕された時の少年の押収品を見ると、ドローン1台、PC2台、スマートフォン5台、タブレット3台などが並ぶ。それだけのものを小遣いも与えられていない15歳の少年が購入できるわけはなく、その部分をまかなったのが囲いからの支援だ。少年は、ブログなどで振込先口座番号を公開しているほか、WebMoneyやAmazonギフト券での支援も受けつけていた。
警察から再三注意を受けながら配信を止めなかったのは、周囲からの承認を得るためであり、支援金を集めるためだったのは間違いないだろう。学校になじめなかった少年が唯一主役になることができ、あがめられたのが配信の場だ。過激な配信をすればするほど承認され、資金が集められるため、やめることができなかったというわけだ。
ある都内に住む男性は、FNNの取材に対して「家族にPCを壊されたことをかわいそうに思い、(2015年2月に)25万円振り込んだ」と答えている。男性は少年をずっと応援しており、インターネット中継に使うPCを買ってもらうための費用として振り込んでいた。少年は高額の支援をした人やグッズを買ってくれた人を「超越者」と呼び、限定の動画を見せるなどして金銭的な支援者を集めていたという。支援者18人から、現金62万円のほか、PCなど合計100万円相当の支援を受けていたと見られている。
逮捕後も、16歳になった少年は、自らTwitter名を「ドローン少年○○(元のニックネーム)」と換えて配信を続けている(執筆現在)。公式サイトには、やはりさまざまな広告が掲載されている。また、「○○(少年名)信者」などのTwitterアカウントを持つ囲いらしき人物も多数おり、状況は変わっていないようだ。
ネット好きの中学生男子に話を聞いたところ、「ドローン少年はかっこいい!」と言っていた。警察にたてつくところが一番面白いようで、配信は過去のものも含めてほとんど見ていると言っていた。「自分ではそれほど思い切ったことができないから、もっとやれ!という気持ちになる」という。
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