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“ものづくり”は3Dプリンタでこう変わる--未来展望と活躍する人材 - (page 2)

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3者の見方と戦略

 原氏によるこうした分析に対してCerevoの岩佐氏もおおむね同意を示す。そして、この先に直面する課題として次のように斬り込んだ。

 「Cerevoでも2014~2015年は3Dプリンタ絡みの取材が非常に多かった。ハイカーブから少し落ちたところにいる事実をまず認識すべきで、実はそこがチャンス。ここで何か新しいことをやらないと、その先の流れに乗れない。しかし、新しい技術を使って何をするのかが、日本の会社は特に苦手。3Dプリンタの課題が解消されつつある中、何をつくるか。我々の会社はあくまで生産技術の向上のための3Dプリンタの活用。新しいものをつくるための手法が生まれたが、それを活用したとんでもないアイテムはまだ出てきていないと思う。本当に頑張らなければならないのは、もっと新しいベンチャーだと思う」(岩佐氏)。

Cerevoの岩佐琢磨氏
Cerevoの岩佐琢磨氏

 岩佐氏の問題提起に対して、オートデスクの塩澤氏は「30年ほど純粋にソフトウェアを開発し、業界に関わってきた会社としての立場」から、これまでを振り返り、現在の取り組みと戦略を説明した。

 「まずはコンピュータがあり、その次にコンピュータで何やるのかという時代があって、ワープロであったりCADであったりといったソフトウェアが出てきた。さらにそれを紙に印刷するための家庭用のプリンタが登場するなど、さまざまなハードウェアが次々に生まれて、コンピュータとつながるようになったりした。そこで我々も設計のデータを作るだけでなく、アウトプットするための機器と合わせて考えていかなければならないと、出力マシンを意識するようになった。実際に何をやるかが大事。そのため、皆の頭の中にあるアイデアを形にするためのツールを提供して一般の人にも無料で配ったりしている。それによって1億人ものユーザーの中からすごいことが起きたら楽しいなと。オープンソース戦略に近い」(塩澤氏)。

オートデスクの塩澤豊氏
オートデスクの塩澤豊氏

 清水氏が代表取締役を務めるAgICは、フィルムの上に電子回路をインクジェットで印刷できる技術を持つベンチャー企業だ。天井や床全体に電子回路を埋め込めるなど、薄くてロールで持っていけるような新しい特性を持つ電子回路が作れることから、新しい生産技術として特に米国で注目されている。3Dプリンタが一般により知られるようになった2013年当時、清水氏は住んでいた米国で、MITで研究していた東京大学の教授と協業で創業。「当時、3Dプリンタのインパクトは強かった一方で、電子回路についてはイノベーションがなかった」というのが技術を開発する経緯となったとのことだ。

 「機械設計だと削ったりして形になったりするからわかりやすいが、電子回路だと電気という目に見えないものなので、どうしても学習するのが難しい。そこで、手で描くと電子回路になる『回路マーカー』というツールを開発した。配線やはんだ付けをしなくても電子回路を描けるので、電気がわからない人にもわかりやすい教育向けのツールにできればと思った」(清水氏)。

AgICの清水信哉氏
AgICの清水信哉氏

 これに対し、登壇者からは日本における技術者の教育やキャリア形成の在り方についての問題点を指摘する意見が相次いだ。「日本では、機械設計や電気は単体で勉強させられることが多い。しかし、3Dプリンタなどは、機械設計もできて開発設計CADもできてと、総合的な教育が必要。ツールが後押しし始めてはいるが、教育が追い付いていないのではないか」と原氏。

 一方、岩佐氏は「Cerevoの視点から言うと、そこは分業すべき。電子回路をつくる技術とCAD、外装データをつくるための3D CADでは専門性があまりにも違い過ぎて、技術者を統合する必要まではないと思う。ただ、Cerevoでは“隣の領域にまで滲み出すエンジニアリング”というのを常々言っており、メカ設計と電子設計両方できるというより、隣の領域を知っておくことは大事だと思っている」と少し異なる考えを示した。

 また、清水氏は「製造技術は日本は昔から強い分野だが、新しい製造技術をベンチャーが取り組む事例は日本ではあまり聞かない。米国では、電子回路を作るベンチャーが5、6社あって、大企業が投資してエコシステムが回っている。日本もこうなっていってほしいと思うが、エンジニアのキャリア設計が日米では異なる。米国ではエンジニアが転職していくのは普通だが、日本の場合は1社で過ごすことが多くて、優秀な人が外に出てこない。大企業の外に技術が出ていかない一因は、そうした文化の違いもあるのではないか」と指摘した。

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