創業メンバーが明かす耳栓型イヤホン「EARIN」開発の裏側

 「耳に完璧にフィットする小さなイヤホンを、ケーブルレスで作りたかった」――。Per Sennstrom氏は、開発の発端をこう振り返る。左右のイヤホンをつなぐケーブルを省き、重量を約3.5gにまで軽量化した耳栓型のBluetoothイヤホン「EARIN」は、一見するとイヤホンには見えない。開発したのは、ソニー・エリクソンやノキアに勤めていた経験を持つ3人のエンジニアが起業したスウェーデンのEpickal ABだ。


Epickal ABの創業メンバーであるPer Sennstrom氏

 Epickal ABは、2013年にEARINのコンセプトを固め、2014年6月に第1試作機を開発。その後クラウドファンディングサービス「Kickstarter」で資金を調達した後、2015年12月に販売を開始した。

 開発コンセプトから約2年での商品化は順調なように見えるが「私たちの思い描いていたプランとはだいぶ異なる。当初の計画では、2014年末に生産を開始し、2015年1月に出荷、今ごろは大金持ちになっている予定だった(笑)」とSennstrom氏は話す。


開発から商品化までのプラン。上が当初のスケジュールで、下が実際のスケジュール

「EARIN」。バランスドアーマチュアドライバを採用した理由は、小型でも納得の行く音質にできたからとのこと。米KNOWLS製のドライバを搭載している

 開発にあたって大きく時間を割いたのが、Bluetoothのアンテナ設計だ。Blueoothは、1対1のペアリングが基本で、左右2つのユニットから構成されるEARINは、どうやってペアリングするかが課題となった。検討を重ねた結果、左のユニットを経由して右のユニットに音を飛ばす方法を採用。「言葉にするのは簡単だが、この部分の開発にものすごく時間がかかった。うまくいかないと音は伝わらないし、当初は音質的にも問題があった」(Sennstrom氏)という。左から右に音を伝えるためには、頭の周りにぐるりと信号を飛ばす必要があり、感度が非常に重要になってくる。Sennstrom氏は「ある程度の大きさを確保すれば、音質を保ったまま伝送できたが、EARINは耳に隠れるくらい小さくしたい、というのがコンセプト。コンパクトさを維持しながら、音質をキープできるアンテナの開発に苦労した」と続けた。

 アンテナ同様に苦労したのがバッテリ部だ。EARINでは直径14.5mm×長さ20mmの左右のイヤホンに60mAhのバッテリを搭載。「小さな機構の中にいかにバッテリを入れるかが問題になった。EARINの大部分をバッテリが占めているといっても過言ではない。そのため、新たなバッテリを作ってくれる会社を探す必要があった」(Sennstrom氏)とのこと。また、カプセルと呼ばれる収納ケースにも600mAhのリチウムイオンバッテリを内蔵し、持ち運びながら充電できる仕組みを開発。バッテリ持ち時間の問題を解消している。

資金調達にKickstarterを採用した理由

 EARINは資金調達にKickstarterを活用し、150万ドルの投資を得たことでも話題を呼んだ。当時のプロジェクトとしては世界で40番目、欧州では5番目、北欧では1番目にあたる快挙だ。「KickstarterでEARINを発表したところ予想以上の投資額になり、これが起爆剤になった。資金調達についてはベンチャーキャピタルとも話しをしようと思っていたが、クラウドファンディングは、すぐに反応が返ってくることに加え、製品のピーアールになることもあって、こちらに絞った。EARINは企画自体に自信があったので、大成功すると思っていた」という。ただし150万ドルという調達額については「これほど成功するとは思っていなかった」と本音を明かした。

 日本における販売代理は、デザイン性の高いオーディオ製品を数多く取り扱うモダニティが担当する。EARINを取り扱いは、モダニティのCEOであるRegis Verin氏が友人から「モダニティ向きの商品がKickstarterにある」と紹介されたことがきっかけ。その後コンタクトを取り、今回の販売代理に結びついた。

 世界最小のワイヤレスイヤホンとなったEARINだが、今後についてたずねると「ワイヤレスイヤホンメーカーの先駆者として、この市場のリーダーになっていこうと思っている。EARINは想像以上に注目を集めたので、次に何を出すのかと期待されているが、メーカーとして開発の手は緩めていない」と自信を見せた。


創業メンバーの3人。現在社員数は15人ほどで、中国や米国にもオフィスを構えている

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