ハードウェアスタートアップの「チケイ」は11月20日、第1弾プロダクトである、ウェアラブルトランシーバ「BONX(ボンクス)」のトークイベントを東京・二子玉川の蔦屋家電で開催した。スキーやスノーボードなど、アウトドアスポーツに最適な商品特徴や開発の背景などを話した。
BONXは、ウェアラブルデバイスとスマートフォンアプリを組み合わせたウェアラブルトランシーバ。12月1日まで、CCCグループのワンモアが運営するクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING by T-SITE」にてプロジェクト支援を募っている。現在の支援総額は約1970万円(11月24日現在)で、目標金額の100万円を大きく上回った。
トークイベントには、チケイの代表取締役宮坂貴大氏をはじめ、雑誌「Pen」の家電コンシェルジュである杉浦周氏、公益財団法人 全日本スキー連盟スノーボードチーム ヘッドコーチである上島しのぶ氏らが参加。ワンモアのCEOである沼田健彦氏がモデレータを務めた。
沼田氏は「BONXは支援者が1000人を超え、今まで実施してきたクラウドファンディングサービスの中で最も大きな支援が集まっている」とプロジェクトの状況をイベントの冒頭で説明した。
BONXを手掛けるチケイは、約1年前に宮坂氏が立ち上げた企業。自らスノーボーダーだという宮坂氏が、滑りながら仲間と喋れない不満を解消するため、プロダクトを企画、開発し、12月の出荷にまでこぎつけた。
一見すると、スマートフォンとヘッドセットで事足りてしまいそうなBONXだが、その中にはアウトドア仕様としての数々の工夫を凝らしている。本体は、専用アプリをインストールしたスマートフォンとBluetoothで接続し、3G、4Gベースの通信規格を用いて互いにコミュニケーションを取ることが可能。「完全にハンズフリーで話したい」(宮坂氏)との思いから、音声認識技術を用い、声を検知しての自動通信をサポートした。同時通話は最大10人まで可能だ。
Penの杉浦氏が「今までありそうでなかったタイプ。参考にしたガジェットは」と宮坂氏に問いかけると、「BONXと同じ体験ができるガジェットは世界にはないと思う。だからこそ作った。以前友人とスノ―ボードをしている時に1人を見失ってしまい、相手に携帯電話を使って連絡を取ってみたがつながらず、携帯電話を出してはコールして、つながらないを繰り返した。それがBONX開発のきっかけ」(宮坂氏)と経緯を話した。
アイデアを思いついたのが2014年の3月で、本格的な開発に着手したのは2015年の1月とのこと。もっともこだわったのは耳への装着感で、「どんな形状なら落ちないか、ずっと装着していても痛くないか、転んでも大丈夫かなどの検証を重ねた」という。本体はシリコン製で、金型の作成は6回にも及んだ。
BONXでは、装着パーツをS、M、Lの3サイズそろえることで耳へのフィット感をアップ。本体には2つのボタンのみを装備し、簡単にミュートにしたり音量を調節したりできるようになっている。
また、スポーツでの使用を想定しているため、風切音対策も万全だ。「本体には2つのマイクを内蔵し、デジタル処理をすることで風切音を低減している。それに加え、マイクカバーを設けることで物理的に音をカットしている点が大きい」(宮坂氏)。
ユーザー視点からあらゆる状況を想定し、創意工夫を重ねて作り上げたBONXだが、クラウドファンディングで支援を募ることによる不安はなかったのだろうか。
「発売前に内容をオープンにしていくことで、真似されないとは言い切れない。ただハードウェアは目に見えるのでわかりやすいが、BONXはソフトウェアを含めてはじめてサービスが成り立つモデル。そう簡単には盗めないつくりになっている」(宮坂氏)と自信を見せる。
全日本スキー連盟の上島氏は「スキーだけではなくて、みんなで楽しめるスポーツで、幅広く使うことができそう。スノーボードチームとしてほしいのは、ヘルメットに埋め込んで周りの人にばれないような情報システム。コーチと選手、同じチームだけが共有できるようなものがほしい」とリクエストした。
チケイには、宮坂氏のほか、開発担当、プロダクトデザイナー、インフラエンジニアなど4人のメンバーが在籍する。宮坂氏自身はエンジニアの経験はなく、「エンジニアと会話ができればものは作れる」と話す。「BONXは、今までスノーボードに行って話せなかったシーンで話せることを可能にしたもの。そうした今までできなかった体験を提供していきたい」(宮坂氏)と商品への思いを語った。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス