2015年に日本にも上陸を果たした米国のオンライン決済サービス「Stripe(ストライプ)」の共同創業者 兼 CEOであるPatrick Collison氏が2月24日、スペインのバルセロナで開催されたモバイルイベント「Mobile World Congress 2016」で登壇した。Collison氏はStripeを「インターネット企業のプラットフォーム」と述べ、米国外の起業家や開発者がよりスムーズに米国で展開できるサービス「Stripe Atlas」を発表した。
Stripeは2011年に米国に渡ったアイルランドのCollison兄弟(兄のPatrick Collison氏と、弟のJohn Collison氏)が立ち上げたオンライン決済サービス。簡単なコードを組み込むだけでオンラインで課金が可能になる。この4年間、取引高は右肩上がりで成長しており、すでにKickstarter、Slack、Pintarest、Twitter、Facebook、Salesforce.comなどが利用している。米国では2015年に、27%の米国在住者がStripeを利用する企業から商品などを購入したという。
「我々はパワフルでクリーンなAPIを提供する。起業家や開発者はこれを利用して、これまで不可能、あるいは難しかったオンラインでの決済を簡単に受け付けることができる」とCollison氏は話し、Stripeは「既存の”Redo”ではなく、新しいことをするために利用されている」と胸を張る。
確かに、Stripeを利用しているSaaS、クラウドファウンディング、モバイルマーケットプレイスなどは、オンラインでの購入の仕組みなしには成り立たないビジネスモデルといえる。インターネットでの決済を容易にすることから、「Stripeは世界最大のデジタル起業家向けプラットフォームになった」とCollison氏はアピールした。
いまやインターネット経済はGDPの5%を占めており、雇用創出につながる大事なセクターだ。欧州では、2001年から10年間のすべてのGDP成長に占めるインターネットセクターの割合は43%だという。「成長の約半分がインターネットからだ。これは凄いことであり、Stripeはこれをさらに加速したい」(Collison氏)。Stripeは現在、世界24カ国をサポートしており、拡大を続けている。財務機関についても、VISA、MasterCard、Alipayなど20社以上と協業している。
この一方で、Stripeがサポートしていない国には、当初から世界に向けて事業展開を図ろうとする起業家が多数おり、欧米と同じ土俵に立つべく、米国で銀行口座を開設するなどして拠点を持とうとする動きが見られるという。しかし、課題もあるとCollison氏は指摘する。「インターネットにより我々は場所を考えることなくコミュニケーションやコラボレーションが可能となった。だが、コマース――お金の流れとなるとまだだ。複雑な規制、互換性のない銀行システム、さまざまな技術が混在する財務インフラなど、国境が残っている」(同)。
「毎日のように、世界中の起業家から対応を求める声が寄せられている。途上国といわれている国々の市民も、インターネット主導の経済成長を活用すべきだし、将来の経済成長を牽引するのはこの国々の人たちだ」とCollison氏はいう。
これに対するStripeの回答が「Stripe Atlas」だ。フォームに必要事項を入力するだけで、米デラウェア州に会社を設立できる。銀行口座を開設して、Stripeのオンライン決済を導入し、税などの法務アドバイスも受けられるという。言うなれば”米国企業設立パッケージ”だ。
銀行口座はSilicon Valley Bankと組み、開設と同時にStripe決済による入金、送金などを利用できる。米国のStripeユーザーとなるため、VISA、MasterCard、Apple Pay、Bitcoinなど、米国でStripeが利用できる決済手段を、Stripeの通常の2.9%の手数料で利用できる。法務面ではPwC、Orrickなどと提携してサービスを受けることができる。さらにIT側での支援として、AWS(Amazon Web Services)とも提携しており、Atlasユーザーは1万5000ドル分を無料で利用できるという。
「現在、数カ月かけて行っていることを、数日でできる」とCollison氏は語り、開発者や起業家は本業に注力できるようになると説明する。米国での企業設立からスタートし、今後は機能追加や地域拡大を計画しているという。
Atlasは、同日より招待制ベータとして提供を開始する。FAQによると、Atlasは最初の100ユーザーは無料で、以降の価格は500ドルとなっている。Collison氏は途上国にフォーカスしてAtlasを紹介したが、グローバルに展開したり、米国で投資を受けようと思っている米国外の企業であればサービスを利用できる。
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