順天堂大学は2月16日、iPhoneアプリを用いた臨床研究を開始したと発表した。Appleが公開した医学研究をサポートするプラットフォーム「ResearchKit」を使用している。
「診察室以外でも身体の状態を診る」をコンセプトに専用アプリを開発。ロコモティブシンドローム(運動器症候群、ロコモ)、パーキンソン病、気管支喘息──の3つの臨床研究を開始した。
アプリ上での問診への回答データに合わせて、本体に内蔵されたタイムスタンプ機能、GPS、加速度計、ジャイロスコープ、気圧計などで収集された運動・環境データを加え、より多面的な病態把握ができるようになるとしている。
「ロコモニター」は、一般のiPhoneユーザーを対象にしたもので、健康状態や年齢にかかわらず参加できる。「ロコモ25」「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」の3種類のロコモ度テストをアプリ上で再現した。また、自身のデータをiPhone経由でネットワーク送信することにより、運動状況やロコモ度の把握、ロコモ予防・改善に役立つ。
iPhone内蔵のセンサで、心拍数・不動時間・歩数・歩行距離・上った階数などを自動的(一部 Apple Watchが必要)に記録し、日々の運動状況とロコモ度との関連性を把握できる。ロコモ度を判定するだけでなく、最適なロコモ予防・改善アドバイスも得られる。
ロコモニターパーキンソン病と気管支喘息の臨床研究アプリは、それぞれの患者が対象となっている。
「iPARKSTUDY」はパーキンソン病患者の運動機能と睡眠を調査することを目的としたもの。パーキンソン病は運動障害が目立つ疾患で、治療方針を決めるには、日常生活全般での活動状況を正確に評価することが欠かせないという。
このアプリを使って患者の生活の質や睡眠の質に関するアンケート調査を行うとともに、iPhone内蔵のセンサで1週間の日常生活や睡眠を調べることで、患者の日常生活の異常を把握できるかどうかを検討するとしている。
iPARKSTUDY「ぜんそくログ」は気管支喘息の患者を対象にしたアプリだ。アンケートに答えてもらい、日本におけるぜんそくの実態調査を行うことで、今後のぜんそく治療の向上に貢献することを目的としている。
ぜんそくは気温や気圧の変化などさまざまな刺激より、咳などの症状が出現する。1日のうちでの変動が激しく、夜苦しくても日中は症状がないことも多く、正確な症状の変化を医師に伝えるのが難しいことがある。また、低気圧がくると症状の悪化を訴える患者は多くいるが、症状の悪化と気圧の変化がどの程度関連しているかはよくわかっていないのだという。
そこで、アンケートによるぜんそく実態調査のほか、iPhoneから気圧情報を取得すること(iPhone 6、iPhone 6 Plus、iPhone 6s、iPhone 6s Plusが対象)により、気圧とぜんそく症状の関連を調査する。この研究を通してより良いぜんそく管理方法を確立することができれば、今後のぜんそく管理の向上が期待できるのではないかとしている。
ぜんそくログなお、iPhoneを用いた臨床研究としては、2015年11月、慶應義塾大学医学部内科学教室が不整脈・脳梗塞を早期に発見して生活の質を守ることを目的とした「Heart & Brain」を発表している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス