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高い継続率は「耳がさみしくなるから」--オトバンクに聞くオーディオブック市場と利用動向 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2016年01月25日 08時30分
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高い水準の継続率とARPUは“習慣化すると耳がさみしくなるから”

 こうしてなんらかのきっかけでオーディオブックに触れたユーザーの継続率が高いことも特徴だという。FeBeでは継続率が35~42%と課金サービスにしては高い水準を維持しているとし、ARPU(加入者1人あたりの月間売上高)は2500~2800円(約2本分のコンテンツ)となっている。上田氏はオーディオブックの利便性や魅力を感じてもらっていること、また長時間のコンテンツであることから一定の価値を感じられていることの結果と推察しているという。

 さらに個人的な感覚と前置きしつつ、“習慣化すると耳がさみしくなる状況が生まれるから”とも付け加えた。「耳から入っていくものは感情に直結する。例えばラジオはパーソナリティがリスナーの耳のそばで語っているような、距離感が近いメディアでそれが心地よく感じられる。朗読として語りかけるオーディオブックも同じように距離感が近いと感じている」(上田氏)

 ユーザー層の拡大によって利用シーンも広がっているなか、女性ユーザーの拡大により有用性の声が高まってきたシーンとして、手がふさがっている状態で作業をする「家事」もあるが、なにより「子育て中」も大きいという。赤ちゃんや小さい子どもがかまってもらえるように読書しているところを邪魔したり、意図せずに本を破損させてしまうケースも少なくない。オーディオブックであれば、それを流しながら赤ちゃんの世話や子どもと遊べるということで、この利点が少しずつ広まっていると上田氏は語る。今後は子育てをしている女性に向けた、子育て本などのラインナップを拡充していくことも検討しているという。

文化放送と初めて共同制作。ラジオ局との取り組みで高齢者にも周知

 オーディオブックにおけるさまざまな取り組みのひとつには、音声コンテンツと親和性のあるラジオ局とのコラボレーションもある。すでにさまざまな局で音声コンテンツの提供などもしているが、1月19日には大手ラジオ局の文化放送と初めてオーディオブックの共同制作した作品を配信した。全国幸福度ランキングでトップに位置している福井県を中心に、日本ならではの地域再生モデルを解き明かしたルポ作品で、第14回新潮ドキュメント賞候補作にもなった「福井モデル 未来は地方から始まる」をオーディオブック化。朗読は文化放送アナウンサーの竹内靖夫氏が担当。約7時間にも及ぶ内容となっている。

  • 「福井モデル 未来は地方から始まる」の朗読を行った、文化放送アナウンサーの竹内靖夫氏

 文化放送は多くのすぐれた書き手の方にご出演いただいております。また長年放送の現場で研鑽を積んだ読み手もおります。こうした“資産”を放送以外にも活かせないかと考え、オトバンク様にオーディオブックの共同制作を提案させていただきました。快諾していただきました上田会長、久保田社長、そして著者の藤吉様には心より感謝申し上げます。今回の経験を通し、音声放送事業者として今後とも取り組んでいくべき事業との認識を新たにいたしました(文化放送取締役技術開発局長 田村光広氏)

 ベテランアナと呼ばれて久しい私ですが……「文化放送初の取り組み」に携わることができて感動しております。この本は、面白い!そしてオーディブック「福井モデル」は、さらに面白い!朗読した本人が言うのですから間違いありません!多くの方にお楽しみいただければと願ってやみません(文化放送アナウンサー 竹内靖夫氏)

 上田氏はFeBeにおける利用者年齢層において、若年層だけではなく60代以上の高齢者の比率が上がっているとも語り、その要因にラジオ局との取り組みによる周知効果もあったのではないかと推察しているという。

出版業界の前向きな姿勢の確立と市場拡大に向けて

 上田氏はFeBe立ち上げの際に、権利処理なども含め出版社側がオーディオブックに対してなかなか理解されなかったことを、苦労したことのひとつとして挙げた。もっともオーディオブックの配信や、それにともなう市場拡大によって状況も変わりつつあるという。2015年4月には新潮社、小学館、講談社、KADOKAWAなど出版社16社が「日本オーディオブック協議会」を設立した。オーディオブック市場の分析や拡大、電子書籍や印刷書籍との共存共栄、著作権などの権利処理、著作者の権利と利益の確保を目指した団体で、上田氏も常任理事として参加している。

 上田氏は「出版業界におけるオーディオブックに対する見方が変わり、出版社側が取り組む姿勢、考えていく場ができたことは大きい」とし、オーディオブックの理解を深め普及に対する基盤作りを進めていくとしている。表だった活動やアピールをする団体ではないとするものの、業界として後押ししていく流れができたことは、より多くのオーディオブックコンテンツを生み出し、ユーザーや市場拡大につながるものと見ている。

 最近ではオーディオブックや朗読の音声コンテンツ配信を行うサービスも見受けられるようになってきている。こと2015年にはAmazon.com傘下のオーディオブックの取次・配信事業者であるAudibleが日本参入にあわせ、オトバンクと事業提携。一部コンテンツを提供している。上田氏はコンテンツ調達に苦戦するAudible側から依頼があったことを明かし「まだまだ市場が小さい状態で食い合う意味が全くない状況。お互いが高め合って市場拡大することのほうが今の段階では大事」として受諾したと語った。今後もオーディオブックの周知や国内市場の拡大、視聴習慣に向けて、さまざまな取り組みを進めていくとしている。

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