Apple共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏は、IoT、ウェアラブルデバイス、ロボティクス、AI(人工知能)など、新たなトレンドが生み出され続けるテクノロジの世界をどのように捉え、これから待ち受ける未来に何を感じているのか。
2015年12月に来日した際の、ウォズニアック氏へのインタビューの模様をお届けする。聞き手は、ラジオDJ、Jリーグやサッカー日本代表のイベントMC、プロジェクトオーガナイザーのケン・マスイ氏。
ケン・マスイ氏:今回は、どのような目的で来日したのでしょうか。また、現在どのような活動に注力しているのでしょう。
スティーブ・ウォズニアック氏:幕張で開催されるテクノロジとポップカルチャを融合したイベント「TOKYO COMIC CON(東京コミコン)」のために来日しました。東京コミコンでは、他のコミコンがやっているようなことはしたくありません。そのため2016年の開催に向けて注力しているところです。
東京開催の前には3月にシリコンバレーで開催されます。私はシリコンバレー出身なので、まずはテクノロジ・ギークの集まる私たちの“ホーム”でやるべきではないかと思っています。そして、テクノロジと(コミックの)スーパーヒーローという掛け合わせでシリコンバレーに次ぐ場所として、東京での開催を希望しました。
東京開催の概要はまだ言えないことが多いですが、Kickstarterが米国で行っているような、スタートアップが考案したテクノロジやプロダクトを披露するような場を日本の文化に合わせて作っていきたいです。また海外のアーティストやハリウッドスターのステージも展開する予定です。私もイベントに参加して、参加者と交流したりしながら楽しみたいですね。
ケン・マスイ氏:東京コミコンには私もプロジェクトオーガナイザーとして参加するので、楽しみにしています。ところで、年に2度くらいは来日するそうですが、昔と今で東京はどのように変化していると感じますか。
スティーブ・ウォズニアック氏:インターネットのせいで最近はあまり日本に来なくなりましたが、日本のデジタルプロダクトの情報はニュースサイトなどを見れば簡単にキャッチアップできますし、自宅にいても東京と仕事をすることは簡単です。東京で起きている変化を知るためには、昔であればそこに住まなければいけませんでしたが、今はインターネットを通じて日本のトレンドに思いを馳せることができます。
エンターテインメントとテクノロジはとても近いところにあります。数学が得意で計算が速いという日本人の特性から、日本におけるテクノロジの発達は著しいと感じています。テクノロジが発達しやすいところでは、エンターテインメントも大きく進歩していくでしょう。日本も今後は米国のように大きく成長していくのではないでしょうか。
ケン・マスイ氏:スマートフォンやタブレットの普及などを背景に、人が接触するスクリーンは多様化の一途を辿っています。今後、デバイス・テクノロジとエンターテインメントはどのような進化を遂げていくと思いますか。
スティーブ・ウォズニアック氏:ステージ、ムービー、TVといったビジュアルエンターテインメントはいつの時代も人気の中心であり、それはこれからも変わらないでしょう。一方で、エンターテインメントを離れると、テクノロジは人間がやってほしいことを実現してくれる存在として進歩していくのではないでしょうか。Siriのような音声コマンドはそのひとつの例です。聞けば何でも答えてくれる、テキストをそのまま音声で読み上げてくれる、そういったテクノロジが次に来るだろうと思います。
そこで重要なのは、テクノロジが人間の期待に自然な形で応えるということです。製品やサービスに向かって、「これはどう操作したらよいのか」という疑問が少なければ少ないほど、そのテクノロジが良い証であると思います。操作がわからず頭が混乱する回数が少ないほうがベターです。
仮に、私がシンプルなテキストメッセージを奥さんに送ろうとします。今は、どこをタップすればいいか、どういう操作をして送信コマンドを実行するのかといったプロセスを私自身が覚えていなければなりません。つまり、人間の頭が機械・テクノロジのために働いている。
しかし将来は、そういったテクノロジにアプローチするという意識さえ忘れられるものになっていくと思います。Appleに私がいたときも、そしてスティーブ・ジョブスも同じ思いで製品やサービスを生み出してきました。人は人のことを思い、考えることのほうが大切です。人間の脳内がコンピュータ(を操作すること)に支配されてはいけないのです。
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