日本で自治体として最初にGitHubの公共アカウントを取得した和歌山県に、GitHubの共同創業者であるScott Chacon氏が12月17日に表敬訪問し、仁坂吉伸知事と対談した。
オープンソースソフトウェア開発のプラットフォームとして人気を集めているGitHubは、最近では、オープンガバメントと呼ばれる開かれた行政活動のひとつとして、オープンデータやオープンソース化を進める場として活用される例が増えている。米国では、ホワイトハウスをはじめ約450の公共機関がGitHubを利用しており、日本では国土地理院が公共アカウントを取得している。
和歌山県は自治体としては初めて公共アカウントを取得し、ウェブサイトで公開した情報をGitHubでも公開するなど実際に活用を進めている。今回の訪問は和歌山県庁での活用に注目しているというGitHub側が、現場の話を直接知り、今後の支援につなげたいとの要望から実現したもので、知事との対談に先駆けて、庁内のオープンデータ化を担当する職員や活動を支援する関係者らとも意見を交換した。
仁坂知事からの「行政の情報化は必須事項で、ビッグデータの活用も視野に入れようとしているが、GitHubの採用がこれほど注目を集めたのは驚いた」というコメントに対し、Chacon氏は「米国の行政ではコストが抑えられるという理由でオープンソースを活用するのがデフォルトになりつつあるが、日本では和歌山県を参考に事例が拡がるのを期待している」と言い、「調達の経緯などもGitHubを使って可視化できるので、何がオープンソース化できるかを考えながらこれからも活用を続けてほしい」とコメントした。
今後についてChacon氏は「公開するデータフォーマットの標準化に加え、ハッカソンなどのイベントで実際に使ってもらうのも大事」とアドバイスしている。GitHubには「プルリク」と呼ばれるフィードバックを受付ける機能があり、それらも市民とのコミュニケーションの機会につなげられる。「市民が成長することは行政にとってもメリットになる。必要な仕事が明確になり、評価もされやすくなる」と説明した。対して仁坂知事も「和歌山が進める防災情報を広く公開するなど情報活用をこれからも進め、みなさんを幸せにしていきたい」とコメントした。
県庁のGitHub活用をサポートする情報政策課の田中一也課長によると、和歌山県では全庁を巻き込んでオープンデータ化を進めており、ウェブサイトに掲載される情報はすべてオープンデータであるという考え方が認知されているという。統計、広報、調達、地理空間情報の4つを重点的に公開する方向で調整しており、2月から公開を始めて以来、ノウハウが蓄積され、意見も出されるようになった。使われるパターンを提示し、公開がリスクではないことを納得してもらうために教育もしているそうだ。今後は、予算をかけずに作業ができるようデータを自動でオープンデータ化することも進めたいとしている。
取材に集まった記者からは、行政がオープンデータやオープンソースを進めるのに際しセキュリティの懸念が生じるのではないかとの質問もあった。それに対しChacon氏は「公開されているデータはそもそも誰でも使えるようにするのが目的であり、万が一内容に不備があった場合も公開されている方が気づきやすく、対応が早くなるのでかえって安全だと言える」と答えた。また、どのような情報をどう公開していくかに対し、和歌山県が先進事例になるのではないかとし、「他の自治体のモデルとなるだけでなく、共通基盤を提案するという方向もあってはいいのではないか」という話も出た。
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