国内ではこのほか、小規模ながらドローン関連の新ビジネスを展開してきた企業がいくつかある。これらの企業は、2016年にドローン市場拡大の波に乗り、大きく飛躍する可能性を秘めている。
1つは、ドローンのエンターテイメント利用の促進を目指すDrone Gamesだ。同社は、クライアント企業のドローン事業開発支援、イベント・コンサルティングサービスなどを手がけている。代表の黒田潤一氏は、ニコ生ドローン大運動会で解説を担当したり、テレビなどのメディアにもよく出演しているので、彼を知っている人は多いのではないだろうか。
ドローンのエンタメ領域に特化している企業は日本ではまだまだ少ない。このためドローンの認知・普及にDrone Gamesが果たす役割は大きいと筆者は考えている。黒田氏は、日本だけでなく海外にも厚いドローン関連人脈を持っている。このネットワークを生かし、国内外問わずドローンのエンタメ領域での可能性を広げてほしい。
次に紹介したいのは、浅草にある空撮会社Jouer(ジュエ)。国内のテレビや映画の空撮を手がけている同社だが、ほかの空撮会社とは一線を画す強みを持っている。それが360度カメラによる空撮だ。
2016年はバーチャルリアリティ(VR)元年とも言われている。というのも「Oculus Rift」などのVR用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が世界規模で普及すると見込まれているからだ。HMDは360度動画を見るデバイスとしても使うことができる。すでにYouTubeやFacebookが360度動画に対応したこともあり、360度動画市場もVR市場とともに大きく拡大することが見込まれる。
しかし、360度動画の撮影・編集は新しい領域で、人材はそれほど多くない。360度の空撮に至っては、ほとんどいないと言っていいだろう。Jouerは360度カメラを搭載したドローンで空撮・編集が可能な数少ない企業。2016年はかなり多忙になりそうだ。
海外に目を向けると、米国と中国がドローン開発でしのぎを削っている。一方、開発されたドローンの実験的導入で最も進んでいるのはシンガポールかもしれない。
シンガポールの郵便事業会社シングポストは10月、シンガポール本島から2キロ離れたウビン島に約500グラムの荷物を配達する実験に成功したと発表。この実験では、スマートフォンのアプリを使って受け取り人を確認することにも成功している。シングポストがアジア太平洋地域で拡大しているEコマース市場に狙いを定めていることを考慮すると、域内の広い範囲でドローンデリバリーが導入される見込みは大きい。
2016年、シンガポールでは飲食店内でもドローン利用が進む年になりそうだ。同国のスタートアップ「Infinium Robotics」が開発したデリバリードローンが同国の飲食チェーン5店舗に導入され、年内にも運用開始される予定という。
同国の飲食業界は人材不足が深刻な問題になっており、今回のドローン導入・運用がうまくいけば、2016年に一気に普及する可能性は大きい。飲食業における人材不足解消には政府も力をいれており、ドローン導入の飲食店への補助金など優遇措置が講じられることも考えうる。
最後にシンガポール国立大学(NUS)の工学部の学生チームが開発した人乗りドローンを紹介したい。無人航空機(UAV)のことをドローンと呼んでいるので、人が乗った時点でドローンとは呼べなくなってしまったが、機体の構造はドローンと同じだ。ちなみに、開発チームはパーソナル・フライング・マシーン(PFM)と呼んでいる。
筆者は運良くこのPFMの試験飛行に立ち会うことができたのだが、実際に人が乗った状態で安定して飛行している姿に驚き、人が自由に空を飛べるテクノロジはそれほど遠くない未来に完成すると確信した。今後のいくつかの改善を経て、実用段階に入るという。
舵を切るとその方向に一気に加速する国、シンガポール。2016年は社会のさまざまなシーンでドローン導入が進みそうだ。
(編集協力:岡徳之)
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