12月11日、デジタルハリウッド大学大学院駿河台キャンパスにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(三十一)」と題したトークセッションが開催された。コラムニストの黒川文雄氏が主宰、エンターテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。
今回は「エンタメ業界・Youは日本で何している?」をテーマとし、日本のゲーム業界で働く外国人が登壇し、それぞれの視点から見た日本について語られた。登壇したのは「World Of Tanks」で知られるWargaming.netアジア太平洋地域所属のコチョール・オザン氏。日本国内だけでなく北米やヨーロッパなどの会社と共同でゲームを制作するWizcorp代表取締役のハンサリ・ギオーム氏。かつてカプコンに在籍し、現在はゲーム業界のエージェントとして活動しているベン・ジャッド氏、米国AppleのiOSチームをはじめ、THQ、GameSaladを経て、現在はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンにてエンジニアとして活躍しているマイケル・ヘリング氏の4人。
最初に話題になったのが、日本人のクリエイターやゲーム会社が海外進出しない、うまくいかないことについて。まずジャッド氏は海外の視点を持っていないことを挙げた。海外では高い人気を誇っていた「Bionic Commando」(※日本名では「ヒットラーの復活」)というタイトルがあり、当時カプコンの米国拠点であるカプコンU.S.Aに在籍していた際、あらゆるメディアやファンからリメイクの要望を受け続けたという。一方で日本では売上がふるわなかったようで、リメイクの要望を伝えてもなかなか感覚として理解してもらえなかったと振り返った。現在のコンソールゲーム市場のメインは日本ではなく海外にあるため、海外ファンの声に耳を傾けてほしいと付け加えるとともに、海外ファンが続編やリメイクを待ち望んで「なぜ作らないの?」というほどのタイトルは、まだまだたくさんあると話す。
こういった保有しているコンテンツのバリューが見えないことに加え、石橋をたたいて渡るような慎重かつ検証を重ねる、そして集団主義的な姿勢もネックだという。最近ではクラウドファンディングによる資金調達の手法も盛んになっているが、特にこの手法をとるのであれば、リスクを背負ってもフロンティアスピリッツを持って、とりあえずやってみるという気構えがないとうまくいかないと話す。
ギオーム氏は、日本国内で十分に利益が立っていることと、日本の会社や仕組みはルールがはっきりしていることのふたつを指摘した。ここでのルールとは、集団や組織で動くというもの。それを鍛えて力を発揮するのが日本としながらも、海外ではルールがハッキリしないため、個々の能力で取り組んでいくのが基本だという。そして日本では個々の能力を発揮させる社会にはなっておらず、会社が個人の能力をつぶしてしまうことすらあるとし、日本のクリエイターが世界では力を発揮できない一因だと説明した。
日本の会社の閉鎖性について言及する場面もあった。オザン氏は「Insert Coin!」という、日本で働く国内外のゲーム業界の関係者を集め、クリエイターのトークショーなどを行う自主的なイベントを定期的に開催している。コミュニティを強化し日本人と外国人とのギャップを埋めることが目的なのだが、オザン氏は日本人のクリエイターに参加や登壇を求めても、会社の機密保持契約を理由に断られる事例が少なくないという。
ジャッド氏も、海外のゲームデベロッパーズカンファレンス(GDC)では、かなり踏み込んだ話が飛び交い情報の共有と交流が行われるものの、日本のコンピューターエンターテイメントデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)では抑えている感覚があり、それは残念だと話す。また技術力やタイトルのお披露目の場であるはずの東京ゲームショウのようなオープンな場で、写真撮影の禁止といった規制が行われるのは、ソーシャルメディアが発達している現在においてはマイナスイメージにしかつながらないとも付け加えた。
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