これまで、愛知県刈谷市など多くの自治体が、小中学生における夜間のスマートフォン利用時間制限について定めてきたが、11月末には東京でも「SNS東京ルール」が策定された。都教育委員会が、都内全公立学校の児童・生徒が、いじめなどのトラブルや犯罪に巻き込まれないようにするとともに、学習への悪影響を防ぐため、SNSを利用する際のルールを定めたものだ。
このようなルールが生まれた背景とともに、効果についても考えていこう。どのように利用すれば子どもたちに良い効果をもたらせるのだろうか。
まず、SNS東京ルール5カ条についてご紹介しよう。
この5カ条を踏まえた上で、学校や家庭ごとにルール(SNS学校ルール、SNS家庭ルール)を定めることが推奨されている。ポイントは、利用時間の長さと夜間の利用について、個々人の利用状況に合わせた制限を推奨している点。ネット利用時間を減らし、リアルの交流や体験を増やしてほしいという考えが垣間見える点だ。
SNS東京ルールが生まれた背景にはさまざまな問題がある。東京都教育委員会は、小学3年生から高校3年までのスマートフォン・携帯電話の使用率を調べている。それによると、小学3年生でも自分のスマートフォンや家族のスマートフォン、携帯電話を合わせると約8割となり、以降年齢が上がるごとにスマホの所持率とモバイル端末の使用率は上がる。つまり、小学生でもほとんどの児童がSNSを利用可能な環境にあるのだ。
また、家庭などでネット利用に関するルールを決めている割合は小学校でも49.4%にすぎず、46.2%は決めていない。SNSを1日あたり3時間以上利用する割合は小学校でも12.0%、SNSを午後10時以降も利用している割合も8.3%いる。年齢が上がるごとにルールを決めている割合は下がり、SNSを長時間利用したり夜中まで利用したりする割合は増える傾向にある。
また、SNSでのトラブルも続出している。自分の悪口や個人情報を書かれたり、仲間外れにされたりするほか、出会い系被害にもつながっている。さらに、スマホを使用する時間が長いほど、国語や算数・数学などの学力が低下する傾向も見て取れる。
その上、携帯電話・スマートフォンとの接触時間が長い子どもほど就寝時刻が遅くなる。就寝時刻が遅い子どもほど、何でもないのにイライラしたり、自分のことを好きと答える割合が低いという。高校生においては、インターネットなどを長時間利用することにより、「目が悪くなった」が28.0%、「寝不足になった」が26.3%、「夜なかなか眠れなくなった」が13.2%、「手や指が痛くなった」が3.0%など、健康面でも弊害が現れている。
このような弊害を問題視した結果、東京都でこのようなルールが策定されることとなったというわけだ。実際、小学生でも携帯電話やスマートフォン以外にゲーム機などのインターネットに接続できる端末を所持している割合が高い。また、公立の小学校などを訪れても、LINEをやっているという子どもが増えている実感があり、LINEにおけるトラブルが相談に持ち込まれることが増えている。その多くはネットいじめやグループ内でのやりとりのトラブルであり、スマホゲーム課金トラブルについても聞いている。
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