ネット印刷サービス「ラクスル」を運営するラクスルは12月3日、新たなシェアリングエコノミー事業として、運送会社に所属するドライバーの“空き時間”を使って荷物を低コストで早く配送するサービス「ハコベル」の提供を開始した。ユーザーは24時間申し込みが可能で、最短3分でマッチングし、1時間以内に集荷にきてくれるという。当初の対応エリアは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、福岡県。
ハコベルは、PCやスマホアプリから最適なドライバーをマッチングし、荷物の配送予約から支払まで完結できるサービス。法人がメインターゲットだが個人の荷物にも対応する。ネットワーク化した各運送会社の非稼働時間を活用しているため、一般の運送会社よりも安い最低4500円からの配送が可能。
料金は配送距離によって決まるため、カーゴ便や軽トラックに積載できる範囲であれば、あらゆる形状の荷物をどれだけ積んでも一律料金となる。12月中に2トントラックの配送も開始予定。別途料金が必要になるが冷蔵や冷凍の荷物にも対応し、GPSオプションを使えば、荷物の配送情況をリアルタイムに追跡できる。
ユーザーが予約をすると、ドライバーの専用アプリにダイレクトに配送依頼が届く。仕事が入っていないすき間時間であれば、ドライバーは仕事を引き受け、難しければ断ることができる。サービスの利用後に、ユーザーがドライバーを評価できる仕組みを設けているため、ドライバーのクオリティも担保できるとしている。また万が一、荷物が破損してしまった場合は、同社が加入する保険によって補償される。
同社では、全国の印刷会社をネットワーク化し、各社の非稼働時間を活用することで、低価格な印刷物を顧客に提供するラクスルを2013年3月から提供している。受注した印刷物のサイズ、種類、納期に応じて最適な印刷会社に発注する仕組みで、2年8カ月でユーザー数は20万会員を超えるという。新たに開始したハコベルは、ラクスルで培った業者をネットワーク化するノウハウを物流領域で展開するものだ。
ラクスル代表取締役の松本恭攝氏は、トラック物流の市場規模は約14兆円あるが、日本通運やヤマトホールディングスなど、上位10社の運送会社がシェアの5割を占めるとするデータを紹介。この一方で、6万社ある運送会社のうち3万社は車両10台以下の小型・零細企業であり、こうした事業者を束ねることで、早く安く配達できる仕組みを構築できると話す。
また、大手運送会社と比較した場合のメリットも紹介。たとえば、大手では広域を効率よくカバーするために、一度荷物を集配所に集めてから配達しており、形状も段ボールが中心だ。一方でハコベルは、受け取った荷物をドライバーが直接相手に届けるため、形状にとらわれない。そのため、大型のスピーカーや着ぐるみ、家具など幅広い荷物に対応できるとしている。
国の許認可を得たトラックのみをネットワーク化しているため、安心・安全も確保していると松本氏。「国交省と違法性がないか常にコミュニケーションしている」(同)。同社では、サービス公開に先立って8〜11月にテスト運用を実施した。173人のドライバーが計433件の荷物を配達したが、トラブルなども起きずユーザーからは好評だったという。
同日の記者発表会では、テスト期間中に実際に配送を請け負ったという、所沢ヤナイ運送の矢内武氏が登壇。これまでは朝と夕方の配達がメインだったが、昼間の空き時間をハコベルで活用できるようになり、従来の売上の4分の1に匹敵する金額をハコベル経由で得ていることを明かした。個人による依頼も多く、引っ越しなどに利用するユーザーもいたという。
印刷に続き、今度は物流事業者のネットワーク化に挑むラクスル。松本氏は今後の目標として、3年後に会社全体の売上の35%を印刷以外の事業が占める状況にしていきたいと話す。「既存の枠組みを変えたり、あり方を効率化するよりも、新しい需要をいかに作り出していけるか。そこにチャレンジしていきたい」(松本氏)。
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